ANTLERS Diary Ant-mark



1999.07.24 ナビスコカップ 準々決勝2nd 


鹿島アントラーズ vs
       浦和レッズ

     ありがとうレッズ(サポ)
        君たちがいてくれてよかった^^






今回のタイトルはかなり品がありません。でもそれだけ嬉しかったという事で大目に
見てください。

駒場でのレッズ戦を0−2で落した準々決勝。半年ぶりの鹿島スタジアムで2点差以上
で勝つしかない。ここのところの連敗中のアントラーズを見れば、ほとんどの人が鹿
島の敗戦を予想していたのではないだろうか?準決勝を東京ガスと国立で戦えて、国
立は自分達のホームだからいいなぁと浮れていたレッズサポも含めて。

しかし私は正直に鹿島の勝利を信じていた。結果論ではなく。なぜなら私達は、ここ
鹿島スタジアムで、勝利を疑うには余りにも多くの奇跡を見てきたのだから。ここな
らば、きっと何かがある。そう信じてやってきたのだ。

その鹿島スタジアムは巨大な工事現場と化していた。スタジアムは屋根が無くなり、
周囲には工事の外壁が張巡らされ、巨大なクレーンが乱立している。完成後には
周囲を一周できるスロープが出来ていなければ解体工事中かと思ってしまうほど以前
の雰囲気は亡くなってしまっている。

まるで豪華になった国立西が丘競技場のようだった。屋根がない事で、視野が限定さ
れサッカーみるぞという感じにさせていた雰囲気がなくなり、反響もなくなった。電光
掲示板もなんだか安っぽく見えてしまう。ああ、やはり生れ変わるという事は大変で
もう二度と戻る事はないのだとシミジミ感じてしまった。

さて変わったのはそれだけではなかった。選手入場時の巨大などよめき。秋田がその
頭を完全に剃ってきたのだ。その風貌は正に破戒僧。正にスタム(マンチェスターU
を三冠に導いたオランダ人DF。ドイツのヤンカーとは異父兄弟(嘘))。

中田の丸坊主は端正で恰好良かったが、秋田の坊主はゴツゴツして恐ろしいの一言。
しかし無数の傷は一体・・・・。しかしこの秋田の存在感が今日の勝負を決めたと
言っても過言ではなかった。

今日の鹿島は、高桑、名良橋、秋田、奥野、室井、相馬、内藤、阿部、本山、柳沢
長谷川の3−5−2。フランデー軍団の謂れの無いデマへの怒り炸裂に期待したい
ところ。

2点を取るしかない鹿島は攻めようとする。対する浦和は最初からベタの時間かせ
ぎをする態度(新しい監督になって少しは成長したようだと思っていたが、最終的
にはいつものレッズだった)。しかし鹿島の攻めは中々有効打が出ない。ビスやんが
いないため、中盤からのパスでの崩しは期待できない。阿部と内藤のボランチは前め
に顔を出す事がなく、ボールが一旦止まってしまって中盤とアタッカンテの間が開い
てしまう。

本山、柳沢、長谷川らはロングボールをキープして形を作ろうとするが、中村、ザッ
プ、池田らが中心となって5バックに近い守備陣に阻まれて中々形を創れない。

サイドの相馬、名良橋らがどうにかボールをキャリーして攻撃を行うが、いかんせん
中盤のフォローが本山一人ではどうしようもない。相馬は4バックになれてしまった
のか、やはり位置が後ろすぎる。そのため守備に走り回る事になり、DFに室井を
入れた意味がない。今日の試合、相馬自身は悪くなかったが、チームとして見ると
室井を有効に利用できなかった相馬は悪い。

ジリジリとして前へ攻められない。こういう時に以前は簡単なカウンターを食らって
負けていたのだ。今日も点を失ってしまうのか?いやそんな心配は必要無かった。
レッズが送出すロングパスは福田のポストに期待して送り込まれるが、そのボールを
尽くフライングダッチマン/スタム・ザ・秋田が弾き返す。弾き返す。吹飛ばす。

風でボールが伸びようが、福田がスピードとフェイントで引離そうが関係ない。どん
なボールだろうが秋田が全て弾き返していた。そのため、前回の試合で見せたような
福田がポストプレーをして後ろから追抜いていく大柴、チキへの縦パスという攻撃が
消滅してしまった。縦の直線的な攻撃しかないレッズ。サイドからの正確性0の攻撃
もたいしたことはなく、レッズが加点する心配は完全に消滅していた。

秋田だけではない。得点にはならないが全員がここ数試合見たことがないような身
体を張ったプレーでボールを奪いにいく。本山のデインジャラスなスライディング、
名良橋のハードタックル。内藤の粘り強い守備。そして阿部。相変らず攻撃面では
視野の狭さと判断の遅さで攻撃をズタズタにしていた(相手がバテた最後はかなり
フリーになり効き出したが)が、守備になると普段は見せないようなレイトタック
ルで絶対に相手を進ませるものかという気迫を見せて襲い掛かってくる。

前半、惜しい攻撃ばかりでまた駄目かとイライラさせたが、少なくとも攻撃する気
持ち、闘う気持ちは伝わってくる前半だった。相手はジュビロではない。相手は
エスパルスではない。レッズならばこのままの気持ちで戦えれば点は取れる。そう
確信できた前半だった。

後半開始。相手は大柴からオランダ語もしゃべれる岡野にチェンジ。鹿島は選手交
代も無し。ゼは本当に阿部が好きなようだ。キッカーならば小笠原を入れれば問題
ないし、鬼木だって大丈夫。なぜなのだろう。今日の勝利は信じているが、ゼの解
任も願っているのに。

前半は攻めきれない鹿島だったが、後半は攻めた。前半は後ろで並んで守っている
だけの内藤だったが、後半は積極的に前へでる。名良橋がボールを持つと、相手中
盤がサイドへよる。そこで出来たスペースに内藤らが走り、名良橋がパスをして
一気にチャンスを作っている。中盤に動きが出てきた事で鹿島の攻撃は活性化する。

しかし得点には至らない。柳沢はこの試合何度も何度もフリーのチャンスと一対一
を創ったが決まらない。以前のゴールへのパスを体現していた柳沢はどこへ行った
のだろうか?動きは素晴らしいし、適確だし、サッカー選手としての問題はない。
しかし彼はストライカーなのだ。チーム全員が奴に繋げばと信じるストライカーに
なってもらわなくてはならないのだ。

もっといえば得点さえ決めていれば、どんなことをしていても文句を言われないの
がストライカーなのだ。マラドーナを見よ、ロマーリオを見よ。あれだけディスコ
遊びをしていても、それが得点の活力源さと言われれば皆押黙ってしまう。柳沢も
余計な雑音を弾き飛ばせるくらいの結果を出して欲しい。

柳沢は昔の自分のビデオを見るのだろうか?ギドブッフバルトに正面から戦いを
挑んでぶち抜いていたあの試合。汗だらけで虎のように燃える目をしていた
レイソル戦。途中交代で彼は2点を奪い逆転勝利に導いた。あのブラジル代表の
スタッフにもなったジウマールが「私がここ数年で見た中で最高の若手だ」と絶
賛し、ブラジル代表GKから2点をもぎ取ったあの試合。サンフのエディートム
ソンがマンチェに推薦したというほど惚れ込んだあの試合。小野らとのコンビで
世界有数のGKチラベルトからハットトリックを達成したJOMOカップ。

ちょっと思い出すだけで、鋭かった柳沢が蘇る。あの日あの試合、自分は何を考え
何を感じていたのか、もう一度思い出して欲しい。「私達の使命は柳沢を日本最高
のFWとして育て代表に送出す事です」といった鹿島フロントの言葉の重みを思い
出して欲しい。それを期待させるだけの力を持ち、それだけのハートを持っている
と信じているのだから。

後半も20分を過ぎ、鹿島も追いつめられてくる。ここで活躍の場がなかった(相手
がいなかった)室井を下ろし、平瀬を投入。4−3−3へ移行。3トップとなって
真ん中へ固まる浦和DF陣をサイドに引き剥がす。

浦和DF陣も中村を始めとしてファール覚悟の厳しい守備で懸命に対抗していたが
前線へのボールはほとんど弾き返され、守備時間が長くなりスタミナを消耗しすぎ
た。それに鹿島の攻撃は益々激しさを増し益々脅威の運動量を見せ始め止められな
くなる。ワルデマールの厳しいフィジカルトレーニングの成果か、鹿島魂のなせる
技なのか。鹿島に必要なのは後は運だけという状態になった。

そしてその時がやってきた。本山とポジションチェンジを行い中央に位置しだした
名良橋がややアーリーぎみのセンタリングをあげる。オフサイドラインからジャン
プした長谷川が必死に飛びつく。GK田北は長谷川のヘディングを想定して上への
意識を高める。しかしあの長谷川が届かない。ボールは長谷川の鼻先を超えて伸び
ていく。田北は慌ててボールを見送った。ボテボテに転がったボールの先はゴール
だった。

どんな強烈なシュートも気迫のこもったシュートも拒んできたゴールが名良橋と長
谷川のもう執念と呼びたくなるようなシュートで開いた。1−0。トータル1−2。
鹿島は残り20分で1点を取れば延長に縺れ込む。

リカルドを投入し、ますます攻撃モードに。浦和は完全足が止まりファールでしか
止められない。そんな状態で今、最も危険なドリブルを持つ本山がゴールラインを
突破してサイドから飛込んでくる。浦和堪らずファール。PKでもよさそうだが、
審判はペナルティエリアギリギリからのFKを指示。秋田、長谷川らにマークが突
く。阿部がキックと見せかけて、横へチョン。そこへ走ってきていたのは相馬。
相馬の最も得意とする45度からの右足シュート。

この一発、普段のように吹き上がる事も、ポストに当る事もない。鋭く低い弾道の
シュートは田北の脇をすり抜けサイドネットに突き刺さる。ゴォォーーール。
2−0。トータル2−2。鹿島は終了10分前ついに浦和に追いついた。この粘り、
この劇的さ、この執念、この興奮。これが見たくてここに居るのだ。これがあると
信じているからこそここに居るのだ。

延長に入り、鹿島は小笠原を投入。しっかりとしたキープ。しっかりとしたスルー
パス。小笠原は短い出場時間ながらその能力を発揮していた。小笠原が前線へ繋ぎ、
前線が勝負する。中盤に顔を出しては逃げずに前へ挑んでいった。この後におよん
でこれだけの選手が交代で出てくれば、浦和は如何ともしがたい。流れも既に無い。

センタリングが上がる。必死にクリア。サイドに転がったボールを平瀬がキープ。
フリーの阿部へ戻す。阿部しっかりと中を確認してセンタリングをあげる。フリー
の阿部のパスは誰よりも優しく誰よりも正確だ。そのボールは柳沢の頭に到達し、
弾き返されたボールは、ゴール奥深くへと突き刺さった。ゴォォーーーーール。
ゴーーーーーーール。トータル3−2。鹿島準決勝進出。また再び奇跡を創りあ
げたのだ。

高桑が一目散に相手ゴール前に駆寄って抱きつきあっている。鹿島に帰ってくる
までの全ての苦しさを洗い流してくれるような勝利だった。怪我人も多く、コンビ
には不安を残す。何一つ改善されたわけではない。しかし、秋田は頭を剃り、全員
の動きには怒りが感じられた。鹿島アントラーズが再び帰ってきたのかもしれない。

試合終了から10分ピクリとも動かないレッズサポを見ると、無常に喜びを感じて
しまう。どうもすみませんでした。





さて、今日の試合、選手には闘う気持ちが感じられたが、インファイトには闘う気
持ちがあったのだろうか?ブーイングをかますのはいい。いくらでもやればいい。
しかし前半点が取れないというだけで何故応援をやめてしまっただろうか?自分達
が全力で応援しないでなぜ他人にブーイングをとばせるのだろうか?サポシーは
「熱狂的に応援する人達のもの」ではなかったのか?ミーハーな入場者と応援を放
棄したサポーターにどれほどの差があるのだというのか?私達は自分達の意見を伝
えたり押付けたりする圧力団体ではない。

ただただアントラーズを愛して応援し続けるサポーターではいけないのだろうか?
その結果、アントラーズが負ければブーイングを投げつけたっていい。悔しくて
呆然として泣けばいい。しかし点が取れないからといって不貞腐れていて、アント
ラーズに対して怒れるのだろうか?勝ったときに喜べるのだろうか?泣けるのだろ
うか?

12番目の選手の足が止まっては、ただでさえ劣勢な今、勝つことは難しい。





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