ANTLERS Diary Ant-mark



1999.05.01 1st.ステージ 第10節 


セレッソ大阪 vs
       鹿島アントラーズ

     勝負するために
        勝利するために




鹿島にとってはきついゴールデンウィークの幕開けとなった前節。そして5/5には
最強の敵、ジュビロ磐田が待っている。是が非でも勝ちたい今節。鹿島は出場停止の
ビスやんの代役に阿部、負傷欠場のマジの代役に本山を投入してきた。FWは柳沢と
長谷川。DFは右サイドに内藤。ボランチは鬼木。

試合開始。鹿島はセットプレーから積極的に狙っていく。セレッソがそれを跳ね返し
カウンターで仕掛けるという展開で試合は始った。

セレッソのカウンターは鹿島の右サイドをついてくる。西谷というU22候補のサイド
アタッカーが中心となって攻めてくる。鹿島はなぜか焦って味方同士が交錯してこだれ
球をセレッソに拾われてしまう。

そして前半9分。ゴールキックをノから森島ファンソンホンと繋ぎ、ファンがギリギリ
までポスト。左に走っていた西谷に流す。西谷これをダイレクトで蹴り込み、逆サイド
のネットに突刺す。ゴール。鹿島0−1。そして試合終了後のスコアも同じままだった。

試合終了までに起きた事。本山の不完全燃焼の途中交代。小笠原の途中出場。相変らず
のスリートップ攻撃。長谷川の負傷による秋田のトップ(中田が秋田の位置でディフェ
ンス)。そして鹿島アントラーズの非攻撃的なもしくは迷走的なパスゲームを見せ付け
られた。

まず本山。もしかして本山なら・・・と期待していたが、やはりU20での濃密なフォ
ーメーション練習の結果創られたチームとは違う。自分の位置がわかっていなく、ドリ
ブル開始位置が元々苦しく、相手はリードして守備第一でくるため潰されまくり、当然
といえる途中交代で終ってしまった。

U20の本山の活躍は比較的プレッシャーの少ないサイドのポジションで、小野、小笠
原、中田らのボールキャリアーが優秀なおかげで前を向いてプレー出来たことにある。
本山がプレーしたポジションはやや守備もしていたが、基本的には94年に引退前のジ
ーコが位置していた「伝説の6試合by相馬」のポジション。それは、わざと開いた位置
でプレッシャーを避け、開いた位置からゲームを創る事で中央にエアポケットのような
スペースを作り出し、それを全員で利用していくプレーだった。

サイドに開くということは中央に比べて自分のプレースペースを限定してしまうが、本
山やギグスのようなドリブル(まだ並べちゃ駄目か)、ジーコのような天才的なパスセ
ンスがないと出来ない。本山は小野、小笠原がしっかりとボールをキープしてくれて、
前を向いてパスをもらい、彼らが本山にスペースを提供してくれたことで、あのスーパ
ーなプレーが出来たのだ。

しかし鹿島では誰も本山に前を向いてボールを渡さなかった。柳沢がポストで身体を張
り、リターンを本山に渡すという私が望んだシーンはついぞなかった。本山は苦しい位
置でボールを受け、ドリブルに頼って潰されていた。

そして本山は自身の悪いクセである消える時間がしばしば現われた。味方がボールをも
った瞬間もトロトロと歩いていたり、カウンターを食らった瞬間もコースを限定するた
めに走ったりするわけではない。プロフェッショナルなフットボールではボールを持て
ば超一流というプレーヤーはほとんど生残れない。いいプレーヤーとは柳沢のように
ボールのないところの動きで勝てるプレーヤーをいう(柳沢も無くなりつつあるが..)

そういうプレーヤーを鹿島でも一人知っていた。増田"96"忠俊という男だ。96年の増田
はトラップはナンバーワン。でもドリブルは潰される。途中交代ばかりという選手だっ
た。しかし97年の増田は違った。味方ボールになった瞬間、爆発的なフリーランニング
を開始、完全にマークを振切った状態で、トップスピードのままトラップ、決定的なド
リブルやシュートを見せてくれた。もう「増田"96"忠俊」という男はいなかった。鹿島
のサッカーが手堅くなり更につまらなくなったのもビスやんのコンビに特化しきった増
田という才能が負傷してからだろう。

本山には溢れ出す才能が見えている。だからこそ、もっと動いてフリーになり、もっと
頭を使って隙無く相手の呼吸の隙を突くようなプレーをしてもらいたい。今日降ろされ
た事が本山の今の限界であり過大でもあるのだ(もちろん、ビスやんの正確なパスがあ
ればもっと活きただろうが)

さて他のV6。小笠原は鬼木と交代での出場。鬼木は前節のようにドリブルとパスで
アクセントになろうとしていたし、実際中央でボールを持つのも鬼木がもっとも多か
ったのではないだろうか。しかし、今日の鬼木はミスが多すぎた。再三ボールをもって
ゴール前に迫るのにラストパスの段階やFWとのワンツーでことごとくミス。相手への
ボールプレゼンターとなってピンチを招いていた。

代りに入った小笠原。既にスリートップ、自分がゲームをつくってボールも運ばなくては
ならない状態。おそらく本田たちも「俺達がカバーするから自分の思うとおりにやれ」と
いったんではないかと思う。実際、フォローが少なく、トップ以外には走る選手がいない
状況、少ない出場時間のため、小笠原らしいプレーはでなかった。しかし小笠原がボール
を取られる事はなかったし、小笠原が相手の裏をついて柳沢へのスルーパスは今日唯一の
勝負のパスだった。そして試合終盤にはメキシコ戦のように素晴らしいラインを描く
ロングパスを飛ばしていた。

ところで小笠原の出場前に既に出来ていた悪夢のスリートップ。ドイツのようにセンタ
リングマシーンと不屈の闘志を持っていればいいが、中盤からトップへボールが運べな
い状態の鹿島でなぜスリートップなのか?ゼ。そんなに放り込みサッカーが好きなのか。

ここ数試合というか鹿島の危機で見え隠れしていたが、やはりゼはとっとと中東へ帰っ
たほうがいいのではないか?ゼはフィジカル的に大きい中東サッカーばかりやろうして
いるように感じてしょうがない。深いバックライン、正確なロングパスとサイドからの
アーリークロス。中盤よりもFWの強化。ここはどこなんだ、誰とサッカーやっている
のか、なぜジーコは何も言わないのか?フロントは真剣に4万人動員を目指すのならば、
勝つと同時に魅力的なサッカーを展開できる監督にお金をかけるべきだ。いまや勝つ
ことさえろくにできず鹿島の美しさを奪っていく監督のままでいいと思っているのか?

なんのためにジョルジを切ったのか?新しい鹿島を創るためじゃないのか?アル・カシマ
でもつくるつもりだったのか?これは負け出したから言っているわけではないんだが、
負けると不満が顕在化してくる。弱いのはもちろん獲得のせいだけではない。しかしチャ
ンピオンチームを弱くしたのは確実に監督のせいだ(これが実力というのならば、その
弱いメンバーで優勝を続けたジョアンカルロスは天才的監督になってしまう)

唯一ゼが笑わせてくれたのは、後半長谷川が負傷すると、中田を入れたことだった。放り
込みの精度を上げて高い位置から相馬のオーバーラップなしでガンガンあげるためだと思
っていたが、なんと中田は秋田の位置へ。そして秋田はトップに残り、FW秋田の誕生。
もうなんか放り込みに対するゼの執念を感じた。カシマの増田はドリブルだけで1分間に
2点とったんだけどなぁ。プレーのほうはともかく不慣れな位置で秋田もがんばっていて
かなり涙をさそった。最近の秋田はなんかおとなしい。何があっても私達は秋田を支持
する。いつものような咆哮する秋田がみたい。三沢での「秋田、服部潰せよ」秋田親指
突立てのころが懐かしい。

さて、実は今日の試合の敗因は本山が活躍できなかったこと、スリートップにはそれほど
ない。スリートップだってやり方さえあっていればいい、今日の敗因はカシマが日本人だ
けだったことにある。

中盤を構成する本田やサイドの相馬や内藤、サイドにはりつく阿部などのプレーヤーは
いないビスやんを探していた。そして近くにビスやんがいないと一度後ろに下げて、ビス
やんにバックラインからパスを出すようお願いした。バックラインではビスやんを探すが
見つからないので、とりあえず横に回していた。

しかし何分経ってもビスやんはいない。結局それがわかってロングパスで放り込むように
なった。結局昨日のカシマの試合はそういう試合だった。日本人誰もが自分で勝負しよう
としない。より確立の高い誰かを探して確実なプレーをしようとしているだけだった。
そうして残り1分をジリジリして戦う事に自分達で追込んでいるのだ。

あのU20のウルグアイ戦。日本の最も美しい先制点、本山が相手をドリブルでオーバー
ドライブ。完全にぶっちぎった後、走ってくる久保(弟)にパス。それをダイレクトに蹴
り込んだ。あの時、本山にパスを出した小野は「モト、ショウブ」と大きな声で叫んだ。
その瞬間、本山に迷いはなく純粋なアタッカーとなった。

今のカシマには、そういう声を出せる選手はいないのか?誰もが誰にパスすべきか自分で
リスクにチャレンジできない。まわりもそれを助けられない。なぜジョルジがいた時のカ
シマが強かったのか?ジョルジがワールドクラスのプレーヤーだという事もあるが、ビス
やんとジョルジ、ふたつのゲームコンダクターがいたから、どちらかをマークしても無意
味だったからだ。

今のままでは、ビスやんさえマークされればそれで終ってしまう。本田にそれを望むのは
酷だ。しかし阿部や鬼木、本山、小笠原らにはそれが出来るはずだ。逆にできなければ
カシマのサッカーには必要ない。2部落ちそしうなチームにでも移って、しっかりとボール
を持てる中盤として重宝してもらうべきだ。

カシマのサポーターはチャレンジを見に来ているのだ。相馬や秋田もフランスでチャレンジ
する心を刻んできたのではないのか?フィールドで答えを出すと言った相馬は、どこにいる
のだ。それは相馬"98"直樹の事だったのか?秋田は自分がジョルジのかわりに長いパスを
出す、ジョルジのように鼓舞していくと言っていたのではないのか?

勝負して欲しい、戦って欲しい。そして勝って欲しい。

次節はジュビロ。完敗したほうがいいのかもしれない。しかし、それでも勝利を願って
見に行くのだろう。応援するんだと思う。今だからこそ、がんばれアントラーズ。










Back