ANTLERS Diary Ant-mark



1999.04.24 1st.ステージ 第 8節 


横浜えふマリノス vs
       鹿島アントラーズ

     怒りと屈辱は
        もう忘れられたのか





またも雨降る土曜日。中国が気象兵器の実験でもしているんじゃないのか?試合終了
ちかくなると止み出すし、ナベツネの差金なのか。もういい加減にしてもらいたい!
と思ったら今度も雨らしい。

少々救われたのはひさしぶりの屋根付き陸上競技場の横浜国際でも開催だったこと。
少なくとも観客は濡れずに済む。しかし選手はまたもずぶ濡れ。これが2002年、梅雨
開催の時の経験となればいいのだが...

今日の鹿島はビスやんは未だ復帰せず。前回あれほどのプレーをしたのにまだわかって
いないゼは、再び中村を右サイドバックで起用。そしてFWには平瀬を初のスタメンに
投入してきた。ボランチ内藤、ゲームメーカー阿部。あいかわらずきつい面子だ。

対する横浜FMは、出資比率はと違い、やけにフリューゲルスの選手が目に付く。波戸、
永井、三浦、佐藤一樹、人数は少ないのに目に付くのは、井原、小村のロートルコンビ
がいないせいか、鹿島にだけは異常に強い永井と三浦がいるせいか。

試合開始。中盤に永井、中村、三浦、上野とそろえた横浜は簡単にポンポンとパスを回
していく、鹿島のボランチ陣が必死に食らいつくが、相手のミスパス以外ではなかなか
取れず、横浜に責められる展開で試合は始った。

今日のボランチ内藤。ビスやんなどの預ける相手がいれば、まだそれほど目に付かない
がミスパスが多すぎた。ボールを奪うところまではしっかりとしているのに、奪った後
にアイデアというか、こうしようととかどこに誰がいるのか掴んでいないため、パスが
遅れる。そこを狙われてプレッシャーをかけられ、相手に奪われ逆にピンチを作ってし
まう。

前半8分、中央で内藤がミスパス。それを中村が拾って左に流れつつドリブル突破を図る。
鹿島DF、永井と城のマークで手一杯。祥郎も追いつけない。中村やや角度のないとこ
ろからシュート。高桑必死に弾くが、外にではなく、がら空きのファーサイドに弾いて
しまう。それをフリーの佐藤一樹がなんなく押込む。ゴール。0−1。

鹿島も攻込もうとするが、右が祥郎では右からの攻撃はアテにできない(それでもこの
前よりも幾分マシだったが)、左の相馬はなぜかこの試合死んでいた。最近スピードが
出てきたはずのセンタリングは全て大きく外れて飛び、FWにまで届かない。相馬のセ
ンタリングやトーバーラップからの左サイドでのポイント作りで鹿島は攻めてきたのに、
その相馬が次々とチャンスを潰していた。今年の夏には海外ヘテストを受けに行き、9月
からはフランスでデビュー、日本は中村に任せた!と思っていたのだが、今日の出来で
はまるで駄目。期待できない。

そのようなわけでサイド攻撃は使えなかったが、横浜がワンボランチのため、中盤の両サ
イドにスペースができやすくなっていた。そこに阿部やマジが顔をだし、中央からパスを
入れていく攻撃が多かった。

前半13分、その左サイドでボールを奪った阿部がフリーになる。ルックアップ。ファー
サイドで平瀬が一番ハジで手を上げている。阿部のロングパスが飛ぶ。平瀬そのボールを
胸でトラップしながら前へ出ようとする。なんかハンドくさい変なトラップになってしま
ったが、結果的にはボールはしっかり足元に落着く。平瀬落着いてシュート。日本代表G
K、ほとんど反応できずにゴールネットが揺れる。ゴォォーーーール。鹿島同点に追いつ
く。1−1。

試合はこの後、鹿島ペースに。いや中盤でのボールキープは相変らず横浜マリノスでボ
ールを回されるとなかなか奪えない。しかし中盤でボールを回すばかりでFWへは入ら
ない。鹿島は間断なく追い続け、ついには2,3人で囲んでボールを奪ってしまう。

鹿島の攻撃は全員で、というほどには厚みが出なかったが、マジ、柳沢、平瀬らが高い
質の動きを見せて、サイドでポイントをつくり、ゴール前へ襲い掛かる。雨のせいなの
かここでもミスが多かったが、鹿島のシュートが多い。

ここでデラクルス動く。左サイドにいた遠藤を下げて路木を投入してくる。今日の不安
定な高桑ではサイドから放り込めばチャンスがあると思ったのか、中村がチョロいと判
断して左サイドから攻めるようにしたのか。

しかし逆転ゴールはその中村から。横浜ゴール右サイドで得たファール。中村がゴール
前へFK。ニアで待構えていた平瀬がそれをヘッドで中央へ流す。相手のマークが完全
に平瀬に集中している中、ファーでフリーになっていたマジがヘディング。
ゴーーーーーーーール、2−1。鹿島アントラーズ逆転。

個々から後半の30分までは、中盤でボールをキープし、あわよくばロングシュートを
狙う横浜と、FW三人で前線で形を作ろうとする鹿島という構図のまま膠着しつつあっ
た。しかしゲームの主導権は鹿島が完全に握り、鹿島のミスで点が奪えないという
状況で、なにか横浜の攻撃に迫力がない。FW柱も死んだまま。それでも永井はあい
かわらず危険な永井のまま。デラクルス、もう少し干していて欲しかった。

後半31分、このまま終るのかと思った試合を破ったのは平瀬だった。右サイドから平
瀬が駆け上がる。ゴールライン際で平瀬がセンタリング。そのボールをオーバーラッ
プしていた相馬がトラップ。相馬びっくりして動きがかたまる。そのままゴールへ向
かってシュートするか、動けばいいのに固まっている。一瞬後、相馬が走ってくる阿
部へ向かってパス。阿部はボールに向かって走り込みシュート。川口完全に翻弄され
なすすべ無し。ゴォォォーーーール。3−1。鹿島の勝利は決定的になった。

決定的になるはずだった。

結果論ではなく、本当にその場で見ていたものとして、なぜゼは鬼木を投入しないのか
と思ってしまった。中盤には全南戦のようなスペースはない。本田はよく動きスペース
を消している。しかしそれでも、永井や三浦がドリブルを始めるとなんなくゴール前ま
で侵入されてしまう。

中盤のモバイリティをあげるためにも、阿部かマジに代えて鬼木を入れるべきだった。
(いつもならここで内藤を投入できるのだが、そのカードは名良橋の負傷で使えない)
FWはたいしたことはなくとも中盤が危ない。見ているもの誰もがそう思っていたハズ。

しかしゼは動かない。そしてドリブルでの侵入を止めるため、むりやりなファールを
自陣ゴール前でしてしまう。普段だったらハーフラインでキッチリ殺しているのに。

わずか2分間。

ファールからのセットプレーで永井に押込まれ、三浦に蹴り込まれ、鹿島のリードは一
瞬にして消滅する。

「この敗戦から何を学び取るかで今後の鹿島の強さが決まる」といったはゼだった。し
かし何も学び取っていないのは、選手もそうだろうが、ゼもそうではないのか? 馬鹿
みたいに守備を固めるのかと思えば、いろいろなチャンスがある時に新戦力を試さない。

勝つために、つねに最善の方法を取っているようにはまったく見えないし、今を犠牲に
してでも選手を育てているようにも見えない。なんのためにそこに座っているのか?

マジーニョが下がった3トップは中盤の激しいチームには通用しない事や、中盤の薄さ
のためにミドルシュートの餌食になりやすい事など、すでにベルディ戦や全南戦でわか
っていることではないのか?

中村が押える相手左サイドは荷が重いことはわかっているのではないのか?負傷している
(この試合でもあるいている時は足を引きずっていた)柳沢をリードした時点でなぜ
代えないのか?

何も考えていないゼは、同点に慌てて長谷川を阿部に代えて投入。本当の4人FW状態。
中東でいい加減なサッカーばかりやってきたのではないのか?カメルーン戦でもみすぎ
たのか?結局、CKやFKを蹴る人間がいなくなる始末。

せめて柳沢に代えて野沢を投入するなりして、FKキッカーを用意していれば、パワー
プレイも身を結ぶのかもしれないが、マジが蹴っているようでは意味はない。

今年一杯つとめてゼには引退してもらいたい。もうまったく信用できない。

もちろん監督だけが悪くて負けた(いや引分けなんだが)わけではない。安易なミスと
軽いプレーを繰返す高桑もこの試合を長引かせた一人だ。川口の根性とスキルに高桑な
みの身体があれば、本当に欧州で通用するだろう。川口はしょうがないが、身体が大き
いという巨大な才能の持主は今日はミスばかり。雨を差引いてもプレイのレベルが落ち
ている。

高桑は自身がどんな状態で起用されたか、もう忘れているのか?3連敗で迎えた平塚戦。
鹿島は背水の陣を持って、初スタメンの高桑にゴールを託した。今までの連敗を振り払
うために。高桑は今、自分が押しのけられようとしている位置にいる事に気が付いてい
るのか?

そして、必死の攻撃を繰返しつつも点の取れないFW。マジはあいかわらず持ちすぎで
ペースを乱していたが、一番乱していたのは柳沢だろう。あの絶妙なトラップはどこに
いったのか?広い視野は?苦しい時だからこそ自分がしっかりボールをキープしてゲー
ムを創らなくてはならないのに、波戸にいいように押えられて何がガウチか。

柳沢は年々成長していて、それをみるのが楽しみなのに、最近のミスの多さはなにか。
あのジュビロ戦。「負けてもいいからもっと柳沢を見せてくれ」と思わせたプレーは、
2点さを跳ね返して逆転したレイソル戦のアイオブザタイガーはどこにいったのか。
燃えるような目でプレーしつづけ、それでいて冷静に決定的な動きをしていたのに、
怪我とはいえ何をしているのだろうか。

平瀬は確実に自分の持味である身長とスピードを活かして、もっともアクティブなFW
としてがんばっている。柳沢がもっとゴール前で決定的な仕事が出来れば、平瀬は活き、
平瀬が活きれば、柳沢だけにマークがつくわけにもいかず、より柳沢が活きてくる。3
点を取ったとはいえ、本来の力ではまったくなかった。もっとあの二人のコンビは輝け
るはずだ。だからこそ柳沢には自分ので切るプレーを思い出して、正確に素早く戦って
もらいたい。

延長戦、鹿島は攻めまくった。いや中盤が本田とマジだけになり、その二人が獅子奮迅
の働きをして攻めようとしていた、が、いかんせん二人だけではチャンスがなかなか創
れない。ゴール前までくればチャンスになる鹿島と中盤だけでは危険な横浜。

普段なら「1分あれば2点は取れる」と信じられるのだが、この日ばかりはまったく
信じられなかった。そして鹿島は得点が奪えないまま、終了のホイッスルを聞く。
鹿島、勝てる相手に引分け。ジュビロとは同点に並ばれ、ベルディには仮とはいえ
逆転されている。

順位は3位だが、今がもっとも危ない時だろう。ここを乗り切り5/5を迎えられれば
チャンスはあるはずなのだか...。

鹿島はなんのためにACWCを戦ったのか。なんのために敗戦を味わったのか。もう
忘れてしまったのか?もう怒りは去っているのか?

私達は何を見に行けばいいのか、鹿島の勝ちだけではない、鹿島が度々見せてくれた、
心うつ真剣で美しいプレイをまた見たいと願わずにはいられない。



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