ANTLERS Diary Ant-mark



1999.03.27 1st.ステージ 第 4節 


テレビィ日本 vs
       鹿島アントラーズ


     雨ニモ負ケズ
        負ケニモ負ルナ





3試合連続雨中の闘い。見る方もかなり辛い。それ以上に選手も辛いだろう。きれいに
晴れた空の下、正確なボールタッチを身上とした鹿島のサッカーを存分にやりたいと思
っているだろう。また、奥野を始め多くの選手が風邪で体調を崩している。国立の空が
晴れるのはいつの日だろう。

試合はまだまだエンジンがかからないうちに、北沢のロングシュートがゴール右すみに
突き刺さり0−1。開始わずか3分。ベルディの守備はガチガチとしたフィジカルコンタ
クトの激しいものだったし、鹿島の攻撃はその影響もあり、トラップミスのオンパレード。
まったくピリッとしない。

この苦境を救ったのは、やはりマジだった。柳沢の柳沢らしいノートラップセンタリン
グをディフェンスラインを突破してトラップ。これが中沢@サイババのファールを誘発。
いや誘発というのは中沢には可哀相だろう。相手の身体や動きを利用して、ファールを
創造してしまう、合気道みたいなプレーで、PKをゲット。これをビスやんが決める。
前半13分。1−1。鹿島同点に追いつく。

これ以後は鹿島が試合の主導権を握り攻勢に出る。マジのセンタリングミスを後ろから
オーバーラップしてきた相馬が見事なセンタリングで柳沢のヘッド。何故かオフサイドに
なってしまったが、鹿島は押している。

普段ならばここで少ないチャンスで確実に得点をゲットし、カウンターに移行していく
のだが、この日のミスは少ないチャンスを活かす前に、鹿島の厳然としたプレーのリズ
ムを崩し、選手達の緊張感を削いでいなかったか。

守備では、ジェフェルソンとエンリケという二人の新外国人に好き勝手にやられてしま
う。特にジェフェルソンには鹿島の右サイドで好き勝手にドリブル、パスを出されてい
た。そしてそこから、石塚を経由してエンリケがGKと一対一になるプレーが多い。

本来ならば守備の統率は奥野や本田がしていて、自陣ゴール前にやってきたときには、
誰もフリーな選手がいないように指示が飛ぶのだが、今日の試合では、相手のフリー
な選手がゴールまでやってきてギリギリで防いで、秋田らがどうしたんだと確認しあう
シーンが度々あった。

そして攻撃では、相手の浅いディフェンスラインにより、ボールキープのスペースを
消されてしまい、中沢らのディフェンスラインの激しい守備で、鹿島のFWは前を向
いたプレーが出来ない。この日始めて見た中沢は、髪型から想像していたのは、チャラ
いベルディ系の選手だと思っていたのだが、187cmと高く、ガッチリとしている。
プレースタイルは荒いが、しっかりとした守備で弾き返そうとしている。後半のコー
ナーキックでは密集の中でガンガンに転ばされていたのは、それだけ鹿島の選手に
嫌がられていたからだろう。ふと粗削りでイエローが多かった頃の秋田を思い出して
しまった。

こうして鹿島は攻めようとしているが拙攻で相手にボールを渡し続け、自陣前でやっ
と取返し、また攻撃のために上がっていく。体力ばかりが消耗していく。そんな前半
40分、エンリケがついにフリーでディフエンスラインを突破する。エンリケの速さを
みやまっていたのか、高桑飛出しが遅れてしまう。しかし、既にエンリケはGKと一
対一の位置に。高桑が飛出した時はもう遅い。高桑がエンリケと交錯。PK。
林がフェイントをかけて、楽々決めてしまう。高桑動きを止めるなんて若すぎる。
1−2。

前半終了。鹿島イレブンはサポーターのブーイングで送られていく。

そして後半開始。鹿島は中盤で確実に相手を殺すために、長谷川を降ろして内藤を
投入。阿部を上げて攻撃力を強化した。相変らず鹿島のミスが続くが、ジリジリと
鹿島の逆襲モードになっていく。鹿島の逆襲を支えていたのは、マジと相馬だ。

マジは完全に自分の役割を理解している。恐ろしいばかりの球離れの良さが鹿島の
攻撃にリズムを創っている。必要な場所では相手のファールを誘い、サイドにボール
が渡ると、モードをFWに切替えて、ファーでセンタリングを待構える。もう我が侭
なだけのマジはいない。

そして相馬。私は相馬ファンなので相馬がごく普通に相馬のプレーをしているだけ
ではあまり褒めたりはしない。しかしこの日の相馬は雨で苦しい中、ボールキープと
上りに関してはパーフェクトなプレーを展開していた。相馬がボールを奪われるシー
ンは絶無だった。後半ゼのくびきから解放たれた相馬はガンガンと上がり捲くる。

センタリングがアーリークロスが多くちょっと相馬の良さを活かせていないような
気がしたが、それでも相馬は高射砲のごとくセンタリングを上げていく。中盤での
フォローがいればワンツーを利用して上がっていく。相手に詰められても、なんと
あの相馬がクライフターンで躱していく。相馬のセンタリングが鹿島にリズムを創
っていく。ゼは見ているか。相馬の実力を。もっと、もっと相馬を使って欲しい。

阿部が負傷退場。かわりに平瀬が投入される。平瀬はその速さを活かしサイドを
突破していく。何をすればいいのかわかっている。途中交代で入って何も出来ずに
フィールドを後にする選手も多いが、平瀬は身体を張ってボールを奪い、前へ繋い
でいく。自身のスピードを活かしてドリブルで突破していく。惜しむらくはコンビ
が確立していないため、せっかくのチャンスを潰していた事だった。ゼが開幕戦で
使ってあげていればなぁ、としみじみ思ってしまう。

後半25分過ぎからの鹿島の猛攻は、ひさしぶりに胸を熱くさせるものだった。
サイドからのセンタリングを中のマジや柳沢が狙う。そのこぼれ球をビスやんや本
田が必死に活かしてリサイクルする。緑色の壁に何度も何度も弾き返される。

もう少し、もっと早くこの攻撃をしていれば勝ててただろう。相手が攻めてきた時、
ボールを奪い瞬時にボールを繋いでいければ、もっと早く逆転できていただろう。
慎重に闘いすぎたのか、相手のフィジカルコンタクトを弾き返す激しさが足りなか
ったのだろうか。

鹿島は負けた。

しかし今日の敗戦には糧とするものが多かった。次節秋田と名良橋を累積警告で欠
くが、この試合で得た事をいかせばいい。もっとも恐れる事は「負けた」事で自分
達の自信を失い、より負けていく事だ。しかし私は鹿島を信じる。鹿島は決して
負けない事を。

鹿島イレブンは試合後、いつものようにサポーターの前までやってきて、ブーイング
を浴びながら挨拶して帰っていった。そしてサポーターは彼らの後姿を「鹿島アント
ラーズ」のコールで激励して送っていった。苦しみを共にして次を目指そう。





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