ANTLERS Diary Ant-mark



1999.02.27 スーパーカップ 


鹿島アントラーズ vs
       清水エスパルス


     やっと来た





去年の長居での敗戦から2ヶ月。本当はそんなことはないのだけど、例年よりも物
凄く長く感じた。ジョルジがいなくなったチームはどう変わっているのか。今年の
鹿島は大丈夫なのか。そういう不安も色々とあった。ただ今日は、本当に、本当に、
ただ鹿島アントラーズのサッカーが久しぶりに見れる、それだけが嬉しくて国立へ
行ってしまった。とはいえ勝ってくれなくては困るのだけど・・・。

今日のメンバーは相手が強豪の清水という事もあり、守備重視のようだった。マジ
が出場停止で、代わりに長谷川が出ており、注目のボランチには内藤が入っている。
そして、守備重視の証拠に控えには鬼木とリカルドというボランチの選手が並んで
おり、攻撃的な本山や小笠原はいない。

ジョルジーニョの代わりはどんな選手にも無理なのだから、新しい鹿島に合ってい
る新しい1ピース(ボランチ)を早く見つけ出して欲しい。(個人的には熊谷なんだ
けど、骨粗鬆症・・・)

さて対する清水は、オリバ、アルディレスが去り、それでも天皇杯準優勝したチー
ムに、田坂、安永、服部という選手が加入してきた。サントスがいるだけに田坂を
どう使うつもりなのかは知らないが、0トップと呼ばれた清水にFWがやってきた
事は充分な戦力アップになる。サントス、伊東、澤登らの中盤の構成力は、磐田に
匹敵するくらい恐ろしいものだ。

そしてキックオフ。2ヶ月ぶりの、そしてこれからまた1年間戦い続けるアントラ
ーズの戦いの開始だ(本当はACWCがあったか)。

試合はぎこちなく、それでも、一瞬一瞬は鋭い、そういうシーズン当初らしい攻防
で始った。パスワークで中盤を支配する清水、そしてゴール前では鹿島のDFと本
田の前にしっかりと防がれていく。対する鹿島は秋田、奥野からのロングボール、
下がったビスやんからの阿部を経由してのパス、それを右サイドのスペースへ逃げ
て柳沢が受ける。しかしそれらの展開がいつものように正確でクリティカルなもの
にならず、トラップミスやパスミスとなって、不要な所でボールをカットされて、
なかなかフィニッシュまで到達しない。

それでも柳沢の動きは期待ざせるものがあるし、秋田、奥野にはジョルジの役目は
俺達が背負うとばかりに意識を持った長い攻撃への展開が出てきている。阿部や長
谷川も充分に存在感を出している。

しかし鹿島は試合を支配できない。やはり原因はボランチにあるのか。この日の本
田は個人的な出来としてはかなり良かったのではないか。本田らしい読みを活かし
た守備、最終ラインに入ってもしっかりと守備をしている。しかし内藤とのコンビ
では攻撃と守備の分担が中々出来ない。本来は左右の関係であり、攻撃時には縦の
関係になる。しかし、本田と内藤ではどちらが攻めるのか、どちらが最終ラインへ
はいるのか、その阿吽の呼吸が出来ていない。

また内藤と本田では展開が小さい。鹿島としても気を付けているのだろう、二人に
ボールが回ると出来るだけダイレクトでボールを叩いて、本田ー奥野ー秋田と全て
ダイレクトで繋いで、そこからのロングパスというふうにジョルジの仕事を分担して
やろうとしている。しかし、これもまだ形になっていない。やはり詰められてギリ
ギリのプレーが多くなってしまう。

そのためか、ビスやんの位置が低くなってしまう。鹿島は長谷川、柳沢の2トップに
2列めに阿部、そしてトレスボランチにビスやん、本田、内藤という感じになって
しまい、攻撃がやはり一段階遅れてしまう。

こうして問題のある中盤、そのためにスカスカになってしまう前線、という感じで、
鹿島の攻撃は自然と手数の少ない大きい展開と速攻になってしまう。

しかし鹿島はそれでも点を取っていく。ゴールキックを中盤で受けたビスやん、相手
を背負ったまま、キープする。一秒、一秒半か、ほんのちょっと間だけなのだが、そ
れが決定的だった。その瞬間、柳沢が斜め前方へ向けて猛烈なフリーランニング、清
水ディフェンスはビスやんへ集中する。柳沢が完全にフリーに。清水DFが気付いた
が遅い。ビスやんからは低く綺麗な流れのスルーパス。柳沢は猛烈なスピードのまま、
ノートラップでシュートを逆サイドに決める。ゴォォーーーーール。シンプルでスピ
ードのある、そして正確な柳沢らしいゴールだった。

ここでほっとしたのか、今までどうにか防げていた綻びがついに破けてしまったのか、
アレックスからのセンタリングを中央に飛込んできた澤登に決められてしまう。ここ
から試合は完全に清水ペースに。鹿島は前半を1−1で終らせるのがやっというほど
清水に攻められてしまった。

今日の清水はサントスの代役の田坂が清水らしくないファールまがいの激しいチェッ
クで鹿島を止める。そこで奪ったボールをアレックス、伊東、澤登が速い展開でキャ
リーする。特にアレックスはアーリークロスあり、サイドチェンジあり、そして、危
険なドリブルあり、それでいて守備にもきちんと戻る。粗削りという言葉がよく似合
うが、まだ21歳。日本帰化という噂もあり、かなり恐ろしい。

そして、もっとも危険な澤登が縦横無尽に走り回る。内藤はボランチをやめて澤登の
マンマーカーになるべきだった。アレックスが自身のスペースをサイドに限定してい
るのに対して、澤登はどこにでも現われてきて、ワンタッチでボールの流れを変えて
繋いでいく。藤田と似たタイプだが、澤登の方が運動量もスペースも広い。

こうした清水にどうにか点を取られなかったのは、安永と長谷川のおかげ、そして、
鹿島の「中盤は捨てて最終ラインできっちりと守る」という方針のおかげだろう。

試合は後半へ。後半の最初こそ鹿島は猛攻を仕掛けたが、風下ということもあり、ペ
ースはやはり清水ペースのまま。高桑は何本もシュートを弾き、限定されたコースの
シュートを正面できっちりカットしていく。

この間、唯一鹿島で気を吐いていたのは名良橋。背中(の背番号)から火が出ている
のか右サイドへの長いロングパスに次々と飛込んでいく。相手と接触してもかまわず
飛込んでいく。その直線的な動きとスピードはまさに槍だ。守備でもアレックスにガン
ガン当っていく。かなりPKなスライディングがあったが、普段からギリギリのスライ
ディングをしているのが目くらましになっているのか、見逃してもらえた。

清水の攻撃は支配しているが鹿島のミス以外では点を取られそうにはない、しかしこの
まま受け続けていればいつかは点が取られてしまう。

それを破ったのは、一瞬のチャンスそして永遠の集中力、常に狙い続けた名良橋がここ
で活きた。後半22分。自陣で奪ったボールを相馬−本田と繋ぎ、本田が前線へロング
フィード。柳沢のポストは相手のファールで失敗するが、そのボールは阿部へ。阿部は
中央をむくが、中央の鹿島の選手には既に回りに3人が。阿部はおちついて切り返し、
サイドの柳沢へ。柳沢ルックアップ。瞬時にゴール前へセンタリング。ボールはDFラ
インの頭を超えてGKの前へ。そのボールに最も早く触ったのは、相馬がボールを奪っ
た瞬間にフリーランニングを開始していた名良橋だった。ゴール中央へ割込み、滑り込
みながらボレーシュート。相手DFの一歩先でのシュート。真田の指先を超えてゴール
ネットへ。ゴーーーール。鹿島アントラーズ2−1。

ボールを奪ってからドリブルは0。全てロングパスだけ。しかも阿部−柳沢−名良橋と
2回のロングパスだけで相手サイドを回しきってしまった。単なるカウンターというだ
けでは終りにする事の出来ない素晴らしい動きとパスだった。

この日の阿部のプレーには去年のような軽さもダルさも感じられなかった。つねにパス
には意志が感じられ、しっかりと走り回って、巨大なスペースを縦横無尽に動いている。
そして囲まれても自分の足元にしっかりと持って独特のリズムのドリブルで切開いてい
く。この状態がコンスタントに出てくれば、例えビスマルクが下がったとしても攻撃の
核が出来る。

そして柳沢。この日は得点以外はイマイチ切味が感じられなかった。おそらくそれだけ
柳沢をマークしていた森岡がいい選手なのだろう。しかし森岡も柳沢の動きを止められ
ても状況判断、視界を止める事は出来なかった。柳沢は名良橋の意志を完全に理解し、
完璧なパスを送った。今年もこういう美しいプレーを続けて行ってほしい。と同時に豪
快なプレーも求めてしまうのだが。

試合は残り20分。しかし、この時点で鹿島は勝ったと多くの人間が思ったはず。実際
鹿島は落着いた守備と鋭いカウンターという完全なカウンタースタイルに移行し、とこ
ろどころでコケて時間を稼ぐというマリーシアも見せている。

いつかのインタビューで奥野か秋田は行っていた。「今なら守っていろと言われたらい
つまでだって守れる」守りに入った自分達にそれだけの自信があるのだろう。いつまで
も攻め続ける清水。しかしゴールの前には常に秋田と奥野がいる。そして最後までそこ
に踏み止まっていた。

試合終了。鹿島アントラーズ、ゼロックス3連覇。それよりも清水という強豪を倒した
という事のほうが嬉しい。たしかに前途は多難だろう。しかしその状態であっても清水
にだって勝てるという事は、選手達に大いなる自信となった事だろう。

鹿島アントラーズと私達の戦いはまた始った。

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