ANTLERS Diary Ant-mark



2000.11.23  2nd.ステージ 第14節 


ガンバ大阪 vs
         鹿島アントラーズ

     そこへ到る路
        






試合の詳細は追えない。土曜日、木曜日、日曜日。今週の鹿島の戦いは厳しく
そして素晴らしいものだった。その興奮のまま、日曜日の国立を迎える。冷静
に振り返っていることはできない。

ガンバ相手に2-1の勝利。相手に新井場、稲本という素晴らしい選手がいたと
いう事もある。イタリア系ブラジリアンのトニーニョセレーゾが鹿島にカテナ
チオとゲーム全体をオーガナイズする意識を植え付けたという事もある。鹿島
は二点を取った後、三点めを無理やり取りに行くのではなく、しっかりと守る
事を選んだ。相手に攻められる時間帯を創ること享受したのだ。

相手に攻められても慌てない。混乱しない。終盤に慌ててミスミス失点してい
た時が昔のようだ。今の鹿島は破綻が無い。ベテランのラインだけに頼るので
はなく、中田が、鈴木がしっかりと相手を押さえている。チーム全体で、且つ
自分が止めるという意志が見える。

トルシエは日本人がイタリア人のように守り続ける事はできない、といった。
それは日本人のメンタリティが守りつづけることに耐えられないからだ、と言
った。しかし鹿島は守りつづける。

鹿島のここまでの全試合1失点、90分以内無敗という記録は素晴らしい。
あと1試合。鹿島の赤い牙城を国立で。


98年。ジョルジーニョという選手に有る意味頼って、中心にして堅い守備で勝
ち取った優勝があった。あの時優勝はした。鹿島のスピリットは素晴らしいが
ジョルジーニョに頼ったままでは、鹿島の将来は・・・と心配した。

チームはジョルジーニョとの契約を更新しない、という英断に出た。あれから
2年。鹿島は中田と小笠原、そして本山というタレントを立派に育て上げた。

中田のその落ち着きといまや深い位置からのゲームを俺が創る、といわんばか
りの自信。そして攻守に渡る才能。稲本ばかり目立つボランチに、俺がいるん
だと強烈にアピールしていた的確な守備。前節では延長に左サイドバックとし
て深い位置から次々とアリークロスを放ち、完全にゲームを創っていた。

怪我で度々痛む小笠原。しかし一度ボールを持てば魔法のようなスルーパスを
出していく。阿部に期待されていた立場をより完全な形で見せてくれる。そし
て銅像シュート。あの相手の意表を突くのに何よりも楽しみを見出す、あのシ
ュートこそ彼の本性。楽なプレーもあるのに、つい魔法を出してしまう。ハジ
なのか、パルデラマなのか。

そして本山。既にその存在だけで相手のラインを2m下げさせてしまう。鹿島が
もっとガンガンなイケイケサッカーをすれば本山の得点は2倍になっているに違
いない。才能の塊。しかしその才能を鍛え上げたのは鹿島が遭遇する厳しい修
羅場だった。トニーニョセレーゾは、前に出て指示をするのを止めるべきだ。
そうすれば本山の存在を忘れることはなく、前節のように勝ち点を損する事も
ない。

ジョルジーニョの衰えと供に凋落している鹿島。ジョルジーニョは後3年は超一
流として出来たかもしれない。しかしやがて来る衰えの時、彼を凌駕する選手
は鹿島に残っていなかったかもしれない。今のグランパスが全てを物語ってい
る。ピクシーにダンスを踊らせすぎた。ピクシーだけで勝ちすぎた。鹿島の選
んだ苦闘の路は、彼らの活躍によって間違いではなかった事が証明されたのだ。


そしてツートップ。柳沢と鈴木。鈴木は戻ってきたばかりの時は、黄色いマジ
ーニョばりのドリブル大好き、足元しか見えないという感じだった。だがここ
数試合の鈴木は、鹿島が求めているスタイルを体現しつつある。中盤に下がっ
ては守備、そしてポストプレー、サイドに流れてキープやポイントを創る。そ
してシュート。柳沢はそれを素晴らしい動きとテクニックで示すが、鈴木は鹿
島でもトップクラスのフィジカルと闘争心で示す。

体を張ってキープ、相手と競り合っても強引なまでに当たり、ボールを持って
突き進んでいく。今日の柳沢とのコンビ、そして守備への貢献は完璧だった。
鈴木がポイントとなるからこそ、柳沢が流れる。勝負に行ける。そして自分で
もドリブルで勝負を賭けていける事を示す。柔と剛。鈴木という原石も数々の
経験と屈辱を持って開花させようとしている。


今日の柳沢は素晴らしい。ここ一年で最高に素晴らしいのではないか。今日の
中継ではチームがアップする中、たった一人トニーニョセレーゾから指示を出
されていた。それが効いたのか、柳沢は鹿島の真のストライカーとして、そし
て最前線のゲームメーカーとして、存分にプレーしていた。運と落ち着きと自
信、それさえあれば柳沢はハットトリックさえ達成していただろう。そしてこ
の試合で自信を得たばすだ。自信は落ち着きを呼ぶ。落ち着きはチャンスを創
り出す。チャンスにトライする事。それが運を呼び込む。

柳沢のシュートまでの動き。ポストプレー。そして今日も出た伝説のスルー。
ガンバを、宮本を恐怖に落とし入れた動きを、国立で生で見たい。渡辺や薩川
にはくれぐれもクリーンなプレーを望まずにはいられない。



鹿島はついにここに到った。ここまで積み上げてきたものは大きい。しかし日
曜日にあと一つ積み上げられなくては多くのものが崩れ落ちてしまう。大分が
今年、去年とあと一つ積み上げられない事を、清水が最後の一つを積み上げる
までにどれだけの時間がかかったのか考えれば、最後の一つの重要さがわかる。

柏レイソルは強い。年間一位も当然だろう。去年と今年の得点王もいる。鉄壁
の守備陣もいる。攻撃的な両ウィング。サイドからゲームを創っていくという
しっかりと鍛え上げられた戦術も存在する。鹿島ファンながら日曜日確実に勝
つとは断言できない。厳しい厳しい戦いになるだろう。

しかし鹿島にあって柏にないものがある。王者のメンタリティであり、ここ二
年の苦しい戦いの経験だ。それを信じて国立に行きたい。そこに到る路を思い
ながら鹿島の戦いが見たい。



金曜日も土曜日もいらない。日曜日が欲しい。今これを読んでいる人達がいる
のであれば、日曜日是非紅い国立競技場で会いたい。一人でも多くのファンが
鹿島の戦いを見に来て、鹿島の勝利を信じて来て欲しい。もうここに到っては
鹿島アントラーズのために出来る事があるとすれば、もう私にはそれしか思い
浮かばない。


国立で会いましょう。








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