ANTLERS Diary Ant-mark



2000.11.08  2nd.ステージ 第12節 


京都パープルサンガ vs
         鹿島アントラーズ

     トニーニョのように
        セレーゾのように






ビスマルクと名良橋がいないとこんなにもクリーンなのか。一枚もイエローカードもでない
試合。今日は鹿島の攻撃の中心だった二人が出場停止。対する相手は二部陥落まじかの京都。
鹿島は二人のかわりに本田と内田を投入。いつものようにトレスボランチと小笠原のトップ
下。相手は二部陥落目の前のチーム。しかし優勝がかかった今、そこまでも手堅くするブラ
ジル人。本当にブラジル人なのか。ジョアンやジーコのように真面目なブラジル人も凄いが、
セレーゾのような慎重なブラジル人も凄い。

鹿島のセンターバックは前節出場停止だった二人。共有充分、体はキレイ。心は贖罪感でい
っぱい。そんな二人ならば既に伝説"のみ"になったカズさんを止めることも出来る。京都は
前節清水を見た身からすればスロー再生かと思わせるほどプレスがゆるい。DFでも中盤でも
鹿島は充分余裕をもって望めた。

相手がゆるいとなれば、トレスボランチからの上がりが出てくる。普段は熊谷の走りが目立
つのだが、今日は名良橋がないため内田が入っているので押さえているのか、逆に中田が
上がってくる。中田は移動の最中トニーニョセレーゾに自分の現役時代のセリエの映像や
フリットの映像を見させられたという。そんなことが効いたのか、今日の中田はひさびさの
フリーマン中田だった。

中盤でボールを持っても相手がこない。自分でも一瞬と驚いて、そしてすぐにドリブルを開
始。ペナルティエリアまできて小笠原と絡んで攻撃を作っていく。そして前半35分過ぎ。
中田が再び中盤でボールを得る。今度も相手がこない。今度は中田もわかっていて驚かずそ
のままドリブルしてくる。

このドリブル。前へ運ぶというよりはボールをキープしつつ上がっていくという感じ。しか
し誰もこない。中田キックフェントを入れ、やっとやってきた相手をかわし、一気に加速、
ペナルティエリアに侵入。逃げるようにサイドに流れ、マークしにきた相手から半身出た所
で股下を抜くラストパス。しかしこれは相手に当たってしまう。

このコボレ球に食らいつくように中田が反応する。相手DFとGKも飛び出してくる。そんな状
況で中田は冷静にゴールを見つける。相手GKよりも一歩早くボールに追いつき、ジャンプし
ながらループシュート。ボールはGKの頭を超えつつ逆サイドのサイドネットに放り込まれる。
ゴール。ゴール。ゴール。中田、攻撃的ボランチと言われた中田らしいゴール。1-0。

このゴールも劇的で美しいゴールだが、真に中田が素晴らしかったのは2点目。中田が1点
目とおなじような位置でボールを受けると、再びドリブル。今度は相手がやってきた瞬間に
前の小笠原へ。小笠原、そのボールをダイレクトでペナルティエリア前の平瀬へ。平瀬は
ゴールに背を向けて、しっかりトラップ。平瀬そのボールを折り返す。ここに中田がいた。
中田は躊躇なくファーサイドへセンタリング。鹿島のボール回しに反応できていない京都。
すっかり振られてしまいマークを離してしまう。ファーサイドでは鈴木がフリーに。鈴木は
飛び込むようにジャンプ、ヘディングシュートをゴールネットに叩きこむ。

けっして速いパス回しをしたわけではなく、全員がシンプルに正確にパスを回しつづけただ
け。そして、中田が起点となり、中田がラストパスを繰り出した。ボランチという位置にい
ながらアタックに参加してゲームを創ったのだ。ビスマルクへボールを渡すことで終わって
いた中田ではない。逆サイドへ性格なパスを放って後はトロトロしていた中田ではない。

中盤、という位置で自分の仕事を限定しない中田がそこにいた。中田は3年かかって最も輝
いていた高校三年時代に戻ったようだ。不調だった、というのはではなく、三年かかって自
分を成長させ、オリンピックを経て精神的に大きくなり、日本のトップの世界を相対的に高
校三年のレベルにまで引き下げるほど成長したのだ。

セリエで中盤として存在感を示しつづけ、トヨタカップでは40歳にして決定的な仕事をした
セレーゾ、彼が自分の姿を投影したくなる選手、それが中田だ。今年は15点取れと当初ハッ
パをかけられた。あと10点足りないがそれは残りの試合とチャンピオンシツプと天皇杯に取
っておこう。

後半に入っていきなり相馬のクリアミスがカウンターシュートとなってパクチソンにゴール
を奪われる。ここから京都に攻められ出すが、鹿島は最後の一線を割らせない。オリンピッ
クには出場できない事で成長した遠藤が深い位置からいいパスやシュートで攻めてくる。京
都が2部落ちしたら伝説のカズさんはベルディ1867が引き取ってくれるが、遠藤はどうする
のだろうか。中田が代表でボランチとして定着するには、稲本や明神ではなく、名波を超え、
この遠藤との争いに勝つ必要がある。

鹿島も相手が出てきたところを攻める。小笠原や内田が右サイドを攻める。だけでなく、何
度も何度も中田が右サイドにやってきて攻める。これで相手は完全にマークを混乱させてし
まった。中田は右からでも鋭いドリブルシュートを放ってくる。本当に中田なのか。

ビスマルクがいない事で中田が輝いた。もう一人名良橋がいない穴をしっかりと内田が埋め
た。名良橋のような派手さはないが、途中交代で何度か出て見せた自信の無さはこの試合な
い。右サイドで小気味いい上がりを何度も見せ、ゴール前ではしっかりとダイレクトでセン
タリングを上げてくる。ボールの流れを切らない。やさしくていいボールを何度も上げてく
る。右の相馬という感じだ。名良橋がいなくなった時、少なくとも鹿島サポを安心させる事
ができるのを証明していた。

後半20分すぎ、ここでトニーニョセレーゾ、本山投入。

その1分後、右サイドでのこぼれ球、小笠原から中田へ。中田はペナルティエリアでボール
を受けゴールラインまでドリブル。ここで充分に相手を引きつけて折り返す。その先には本
山が。高校選手権準優勝チームのキャプテンから優勝チームのキャプテンへのパス。これを
落ち着いて決め、鹿島3-0。こういうシーンを見ると本当に鹿島はしっかりと強くなった、と
思う。若手を育て立派に成長させて強くなった。いいチームだ。

ここで鉄壁セレーゾ、金古を入れて5バックへ。ワントップに柳沢を入れてゲームをクロー
ズさせた。完全に逃げ切り。鹿島優勝まであと3つ。成績次第では年間勝率優勝も可能。
あと3つ。中田がフィールドに残りつづけ、本山が現れ、柳沢が復活すればチャンスは充分
ある。



Back