ANTLERS Diary Ant-mark



2000.11.04 ナビスコカップ決勝  


川崎フロンターレ vs
         鹿島アントラーズ

     The Load-Back T
        王帰還せり






ナビスコカップ決勝。鹿島は97,99年続く三度目の戦い。去年最悪の状態から
この決勝にやってきて、最後の最後で力尽きてしまった。それが鹿島の復活を
遅らせてしまったのか。今年こさは負けられない。鹿島を支えつづけた自信を
取り戻すために。新しい若い力が王者たる自信を得るために。今日の相手は川
崎フロンターレ。一発勝負。快晴。国立。負けるわけにはいかない。

今日の鹿島は、曽ヶ端、名良橋、秋田、ファビアーノ、相馬。ボランチは本田
と中田と熊谷。トップ下にビスマルク。そして鈴木と平瀬のツートップ。小笠
原が前節でイエロー.epgになってしまっため、今日はトレスボランチ。自力
でまさるメンバーでしっかりと守備をしていればいつかは勝てる、という手堅
いトニーニョセレーゾの作戦だ。

キックオフ。予想したとおり、厳しい立ちあがり。フロンターレは全員で激し
く鹿島にプレッシャーをかけてくる。ツートップにボールが回ると確実にファ
ールで止めてくる。鹿島はビスマルクが高く高く位置できているのはいいが、
スリートップのようになってしまい、ボランチとの間のボールの周りが悪い、
というか鹿島はあえて一気に攻めないという感じでどこか余力を感じさせる攻
め。淡白な攻撃のみ。慎重に慎重に。決勝戦らしい戦い方だ。

鹿島のボランチは本田が中央右目。中田が左。熊谷はやや右サイドによった形
でポジションを取っている。引いた位置から熊谷は右サイドを駆け上がり、中
田は左のスペースにゆっくりと上がってボールにタッチしていく。そして本田
が中央に進出していく。

サイドに上がるスペースを用意して攻撃時に一気利用する予定なのだが、ボー
ルのまわりが悪い。前線に柳沢がいないためキープしたりスペースへおり返す
ことも無い。基本的には中央でボールを回すのがビスマルクと本田になってし
まうが、今日の本田はミスが多い。本田にボールが回ると細かいパスワークに
綻びが出てしまう。

そんなポジションの悪さに合わせて、鹿島の慎重な姿勢もあり、攻撃という面
では停滞してしまう状況だった。それでも鹿島セットプレーから再三いい攻撃
を作っている。鹿島は攻めていないが得点を狙っているという事か。

そして先取点もセットプレーから。右サイドからのFK。弾かれてクリアーされ
たボールを本田がセンタリング。秋田はペナルティエリアの中で胸トラップ。
相手DFがヘディングで弾くがその先には中田。豪快なボレーシュートをゴール
へ叩きこむ。ゴオオオオオオオーーーーーーーーーーール。鹿島先制点。ほぼ
優勝を決めるゴール。これでまぎれは存在しない。後は確実に勝つだけ。

このゴールで気を良くしたのか。中田の守備がさえまくる。ただでさえ鹿島は
守備では完璧な形をつくっていた。相手を追いこんではもう一人が確実にボー
ルを奪う。パスコースを限定していき、確実にパスカットする。ファビアーノ
と相馬がコンビを組み、秋田と本田が相手を押さえ込んでいたが、ここから中
田の存在感が増す。

中盤での一対一に完全に勝ち、最終ラインの前で次々と相手を仕留めていく。
恵まれたフィジカルを活かして、ヘディングで長い足で空いてからボールを奪
いだす。相馬とファビアーノが忙しく走りまわっていたのが段々と無くなって
いく。

中田は大きくなった。まだ怪我明けで完全ではないはずだが、中田は自信と余
裕を深めている。全てのプレーが滑らかに、という事は早く動き出せる。そし
て不要なファールをしないで相手の意思を止めていく。

中田が戦ってきたマッカーシーやフォチューン、ロナウジーニョに比べれば、
ガナハ、ルイスは子供のようなもの。彼らの化け物じみたスピードもテクニッ
クもない。中田はU-23という舞台でたった3試合ながら大きな経験をしてきた。
それがここで出てきた。守備をしないボランチといわれた男は、U-23から帰っ
てきて、また一歩巨大なボランチに近づいていた。

後は攻撃時の存在感だろう。U-23の時もだが何かに遠慮している。最も正確な
キックを持っているのに自分では蹴らずに横パスを出ししまったり、ファビア
ーノがボールを持っているときも俺に寄越せというアピールが足りない。中田
よりも前からビスマルクが戻ってきてボールを受けている。

中盤の王様としてボールを受け、裁き、ゲームを組み立て、豪快に上がってい
ってシュートを決められるようになった時こそ鹿島のスーパーボランチの誕生
だ。中田浩二が一人でボランチの位置を占めた時、鹿島の中盤は攻撃的な選手
三人を配置できる。本山、小笠原、野沢? 強い鹿島の復活に中田の君臨は欠か
せない。

後半開始。相変わらず厳しい戦いが続く。フロンターレもよく鍛えられた。1
点取られたこの状況でも攻め急がずしっかりと守備をしてくる。奥野や鬼木も
必死に体を張って防いでくる。彼らの意地は鈴木以上かもしれない。

鹿島も七人で野持ってビスマルクへ。ビスマルクから相手DFの裏へ出るボール
でフォワードが走りこむ、という徹底した戦術で守る。相手のリカルジーニョ
がドリブルやキープばかりでボールを止めてくれるおかげで、ゆっくりとしっ
かり守れている。そして無理をしない。

自分で適当なスケジュールを引いた張本人が「つまらない」とこの試合を語っ
たが鹿島は水曜日も試合があるのだ。相手は攻め手がまるでないほど確実な格
下。無理をする必要も義務もない。ただ淡々と時間を進めるだけ。豪快に調子
にのって戦えるほどまだ鹿島には自信がない。勇気がない。だからこそ確実に
戦うのだ。

そして2点を奪ってしまったらそれは決定的だ。相手ボランチが自陣でパスコー
スを探している間に、鈴木が後からボールを奪う。そのボールを本田に預け、
本田は前の平瀬へ。平瀬はトラップして相手選手に近づいたと思えばドリブル
で逃げる、逃げると思えば近づく、といった変則的な動きでボランチとDFの間
のスペースに侵入してしまう。相手が止めにきたときは既にペナルティエリア
内。今日の神経質なジャッジのモットラムは平瀬の思惑通り、ペナルティスポ
ットを指さす。

これをビスマルクが確実に決め、2-0。ここに鹿島の勝利は確定した。

トニーニョはここで羽田を投入、相手FWのマークを確実にする。そして柳沢を
投入しボールキープと自信回復を図る。トルシエールならバランスを意識して
守備ラインの人数は増やさない。クラブチームだからこそ、お互いの信頼関係
が深いからこそ、代表よりも柔軟に対処できるのだろうか。それにしてもトニ
ーニョセレーゾ。攻撃はブラジル人、守備はイタリア人。凄い奴だ。

今の川崎にゲームをひっくり返す力はない。鹿島が時間をかけ(ロスタイムには
みんなに見送られ長谷川を時間稼ぎに交代させることまでも!)、ゲームをクロ
ーズするのを待っているだけだった。

試合終了。ロスタイムの悲劇はない。モットラムのホイッスルは鹿島が二年ぶり
にチャンピオンになったことを高らかに宣言するものだった。













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