ANTLERS Diary Ant-mark



2000.07.29  2nd.ステージ 第07節 


鹿島アントラーズ vs
         セレッソ大阪

     勝てる試合を勝ち
        負ける試合を負けろ






延長前半、鹿島ゴールにVゴール/オウンゴールを蹴りこんだ本田を責めることはできない。ほぼオフ
サイドな真中と森島の飛び出しを見逃した副審が悪いわけでもない。延長に入るまでに既に鹿島はそ
ういう流れを創っていた。トニーニョセレーゾが言ったように「負けるべくして負けた」。今までの
6連勝も含めて、それがあったからこそ、今日の負けがあったのだ。

中田を出場停止で欠き、ボランチ本田の鹿島。キャプテンマークを巻いていない相馬のプレーが著し
く悪いことをトニーニョセレーゾはまだ見抜いていない。

対するセレッソは西谷をケガで欠場させ、西澤をベンチスタート。杉本という影武者二号(一号はジャ
ンボ上村)をトップに据えて、森島、ユ、ノ、田坂、内田らの中盤。里帰りを果たした真中はベンチス
タート。

ビスマルクも復帰して、再びダブルゲームメーカーとなりより多彩な攻撃が見られると思ったが、現
実はそんなに甘くなかった。セレッソの激しいプレッシャーにさらされ、鹿島はボールを繋げない。
更に酷いのはビスマルクがいつもの病気のように後へ後へと下がってきてしまう。

ボランチまで下がって、ボールを受けて前線へ捌こうとしてしまう。そのために小笠原やツートップ
は孤立してしまう。ビスマルクのロングパスは局面を打開する力はあるが、如何せんロングパスでは
押上げがないため、一人での突破となってしまう。相手がディフェンスラインを押上げる攻撃的なチ
ームならばいいのだが、今日のセレッソはまず先制点を取られないことを主眼に柳沢らトップの近く
に4人のディフェンスが張付いたまま。ロングパスばかりでは打開できない。

ここまで楽に勝ってきたつけともいうべきか、きれいに決まったロングパスからの得点を忘れられな
いのか、ビスマルクのロングパスばかりが目立ち、柳沢や平瀬が苦しげにポストをするシーンばかり
目に付いてしまう。

守備重視な本田はともかくとして、前節の試合で縦横無尽の動きと飛び出しを見せた熊谷、小笠原が
そのままのパフォーマンスを示せればいいのだが、この試合ほとんどと言っていいほど彼らに見せ場
はなかった。もっとオープンスペースに飛び出し、フリーなスペースへ移動してボールを繋ぐ仕事を
積極的に動ければいいのだが、何故かビスマルクがボールを持った時点で動きが止まってしまう。

ターゲットになるのではなく、ボールの動きを創るのではなく、ゲームからは消えたまま。若さゆえ
の不安定さか。ますますツートップは孤立してしまう。鹿島の攻撃はほとんど停滞してしまった。

本田はこのところ調子が落ちているのか、パスミスが多すぎる。守備ではやや引き過ぎだがしっかり
と相手を押さえられるのだが、せっかく取ったボールをうまく展開できず、逆に本田の位置からカウ
ンターを食らうことしばしば。杉山の何本かのシュート、きっちりコースを押さえていたので高桑は
正面で押さえることが出来たが、それにしてもシュートを撃たせすぎる。

形が出来ないまま後半へ。後半になれば西澤が出てくる。ボールポゼッションは鹿島だが、完全にセ
レッソの戦略に乗せられてしまった。

後半セレッソは西澤投入とともにギアを組替えたかのように攻撃的に。ノ、ユの韓国人サイドハーフ
のドリブル、キープ、そしてオーバーラップしてくるサイドバックへのスルーパス。相馬や本田がノ
を押さえに行っても、わかっていてもサイドを二人に突破されてしまう。二人の能力ではなく、確実
に約束されたオーバーラップとそのタイミングにだ。

相馬が完全にノのスピードを止めた瞬間、清水がオーバーラップをして追い越していく。相馬はノの
マークのため動けない。ノの中へ切れこみが一番怖いからだ。少しでもオーバーラップが遅れればも
う一人きてダブルチームも出来る。ノが突っ込み過ぎていれば相馬だってアタックできる。ギリギリ
のタイミングでオーバーラップが来る。相馬は真っ赤な顔をして走り、よくノを押さえていたが、セ
レッソの確立された攻撃には手を焼いた。ユは逆にスピードはないが、想像以上に柔らかいパスで
縦横に味方を走らせている。

そして森島と西澤。森島の動きは恐ろしい。中盤で守備に走りまわっていたはずなのに、攻撃時には
最前線に。そしてドリブルはあくまでもボールを動かす手段、囲まれる前に味方と自分を生かすため
に効果的なパスを出す。得点も取れるがより味方を活かすプレーをしている。

西澤。秋田がバンテージを巻いて流血しながら西澤を押さえているが、ヘディングの競り合いでは五
分五分かやや負けている。強いプレーヤーになっている。柔らかさはそのままで。

後半20分。ここで鹿島は勝負に出る。局面を破壊するために本山を投入。ボールを運べる選手が投
入されたため、鹿島の攻撃は活性化する。肩をケガしているとはいえ、疲れ果てたセレッソ守備陣に
本山を止める力はない。

鹿島やっと自分達のペースを掴む。守備陣は堅い。シュートは撃たれてしまうが、最終的には崩され
ていない。守備陣は奮戦している。本山はトップ下で数々のチャンスを創り出す。をもう少しで何か
を打開できる。

ばすだったのだが、平瀬を替えて中村祥朗のサイドハーフとして投入で崩れてしまった。祥朗のプレ
ーは鹿島レベルには達していなかった。中村的には今までの公式戦で一番いいセンタリングを上げて
はいたが、もっと多く相馬の上がりを潰し、ミスからボールを失っていった。中村本来の強気なプレ
ーは影を潜め、迷いながら上がっていくだけのプレーが目に付いた。

鹿島のプレーが悪かったという事ばかり書いているか、それでも鹿島の選手は闘志を持って戦ってい
た。うまくはいっていないが必死に戦っていた。秋田が本山が名良橋が、その必死さを背負って戦っ
ていた。セレッソも激しい攻撃を、鹿島も激しいカウンターを、終盤に来て試合は一気にヒートアッ
プした。

"コロッセオ"鹿島スタジアムのサポシーは久しぶりに赤い壁とばかりに隙間無く埋まっていた。その
サポシーから切れることない鹿島アントラーズコールが、悲鳴が、雄叫びが響き渡る。舞台は整って
きていた。

それでも延長で負けたのはなぜだろう。平瀬t@いなくなったため、FWの枚数が薄くなった事が原因
なのか、度重なるセレッソの攻撃に晒され、ディフェンスラインに多大な疲労がたまっていたせいな
のかもしれない。

しかし最も大きい原因は戦い方にあったのだろう。今まで楽をして勝ちつづけてきたため、前半の鹿
島には必死さがなかった。流しても勝てる、ロングパスで相手を破って勝てるはずだという油断が鹿
島の攻撃からひたむきさを奪っていたのでないか。

前節のように、小笠原が熊谷が飛び出し、ボールを前へ繋ぎFWをサポートし、両サイドはオーバーラ
ップとサイドチェンジを繰り返しながら相手のディフェンスラインをボロボロにしていき、FWはスピ
ードと動きの質でスペースをつき、一瞬でゴールを奪う。そういうサッカー忘れずにサボらずやって
いくべきだった。

疲労はあったとはいえ、楽をしすぎた、過信しすぎた戦いでは勝つことは難しい。

だが、この負けには不思議と悔しさはない。前期散々見せられた勝てる試合を何時の間にか負けてし
まう展開から比べれば、負ける試合できっちりと負け、自分達の反省材料を見つけられ、そして、終
盤には鹿島らしい必死さを見せてくれた。

この試合の負けはこの試合で完結はしない。次の試合でこの敗戦が何だったのか決まる。









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