ANTLERS Diary Ant-mark



2000.07.26  2nd.ステージ 第06節 


ジェフ市原 vs
         鹿島アントラーズ

     来年の鹿島
        2002年の日本






ジェフ市原と臨海。今年で最後か今年で最後かと思わせておいて2年連続の残留。今年もきっちり
残りそう。来年もここにくるのかと思うと少し憂鬱になる。鹿島よりも近いんだけど、なぜか
最果ての地にきた気分。水曜日の臨海ばかり来ているから余計そうなのか。

ビスマルクが出場停止で中盤の構成は、小笠原のゲームメーカー、中田、本田、熊谷のトレスボラ
ンチ。本山がケガのためちょっとキツイ構成。野沢でもベンチに入って安心させてくれるかと思っ
たが、トニーニョセレーゾ内田を用意しているところを見ると、ここぞという時はまた名良橋を上
げる気のようだ。

試合開始。序盤15分すぎまでは五分五分の展開。攻撃をミスする鹿島、攻撃の形を創れない市原と
いう感じ。いい感じで中盤で市原からボールを奪う鹿島だが、肝心の攻撃に打つった時にミスが多
すぎて攻撃がゴールまで繋がらない。

柳沢がポストになるが、スバイクが合っていなかったらしく転んでボールを失いまくる。ジェフの
守備陣が果敢にラインを上げてくるため、オフサイドを取られつづける。しかし最も大きな原因は
本田が中盤で数多くボールに触れたことだろう。

トレスボランチの真ん中に本田が入る。小笠原が左へ流れやすく、本田の前に大きなスペースが空
いている。そして本田のコーチングがやはり一番大きいのだろう、自然とボールは小笠原の前に本
田へ回る。その本田、今日はパスが短い、読まれやすい。相手に次々と取られていく。ひさしぶり
のスタメン、感覚が違うのか。ビスマルクがいないという事が気負いとなっているのか、いつもの
シンプルな繋ぐパスではなく、攻撃的なパスを出してミスをしていく。

鹿島の攻撃はこうして失敗に終わるが守備がいいため、すぐボールを奪い返して攻撃に移る。
私はいつも平瀬が下手だ下手だと書いている。事実だと思う。それでも平瀬はやっぱりいいと思え
るのはスピードと得点感覚、そしてこの試合の序盤でもっとも活躍した守備への貢献があるからだ。

相手が前へ出して一度中盤へ戻した瞬間、平瀬は猛ダッシュでセンターサークルまで戻ってきて、
パスを受けた選手へプレッシャーをかける。長い足を伸ばしてボールを掻っ攫い、味方へ簡単に叩
き、ただちに反転し攻撃に移っていく。柳沢もしっかりと戻ってパスコースを限定していく。それ
だけ動きながら、攻撃の時は長いパスに反応してダッシュを繰り返す。

その守備のおかげで鹿島は何度もミスからボールを失いながら、決して試合のペースを逃すことが
なかった。平瀬はオリンピック代表になってばかりのころよく足を攣っていた。記者が中村俊輔に
足を攣ってばかりの平瀬で運動量に問題はないのかと聞いたところ、中村は平瀬さんほど走りまわ
って守備に攻撃に運動量のある人はいない。そのおかげでどれほど助かっていることかと即座に否
定していた。今日の平瀬にも「どれほど助かっているか計り知れない」。

ただ守備をするFWは何処にでもいる。その昔柱と呼ばれた選手も守備的FWだった。柳沢と平瀬はそ
れ以上に決定的なスピードを持っている。柳沢は技術と美しいパスを、平瀬は驚異的な得点感覚を
持っている。日本が世界と戦っていく場合、岡田が示したコレクティブで激しく速い守備からの攻
撃というプランは間違っていない。それでなくては世界の強豪とまともな試合はできない。しかし、
それをベースにして、それ以上に攻撃的なスピードが必要なのだ。柳沢と平瀬はそれを持っている
はずだ。

ミスで攻撃が出来ないのであれば、ミスがなくなればいい。柳沢はスパイクを替え、本田よりも中
田と熊谷がボールを持ち出すことで鹿島は徐々にペースを握り出した。

ボールを奪った鹿島。右サイドでフリーな熊谷へ。熊谷は足元へきたパスをダイレクトで叩く。DF
の間へ通ったパス。柳沢は見事ウェーブの動きでオフサイドをかわし、独走態勢へ。平瀬へ相手DF
を振り切って飛び出している。2-0。それでも柳沢は確実性を求めた。鋭くファーへ蹴り出された
スルーパス。平瀬はもダイレクトでゴールへ、いやゴールキーパーへ蹴りこむ。恐ろしいほど美し
いカウンターはキーパーに偶然当たり、弾き出せれてしまう。

フリーでもパスを出す柳沢、それでも50ゴールに高卒としては最速。去年の事件でメンタル的に最
悪だった時期もあるのに。やはり才能の塊なのだろうか。

その柳沢がゴール前のショートパスをピタリと足元へ受け反転したところをファールで倒される。
フリーキック。キッカーには名良橋と小笠原が。名良橋がここは俺様的に出るだろうと思っていた
が、大人なのか、小笠原がキック。ボールは大きく弧を描く。壁を避けるように超え、ポストの外
側から落ちるように曲がっていく。ゴール右前。絶対にゴールキーパーが届かない。ゴォォォーー
ーール。1-0。鹿島先制。

小笠原見事なゴールで二戦連続。何よりもビスマルクがいないこのチャンスをしっかりとモノにし
たフリーキックからのゴール。小野だけではない、中村だけではない、俺もフリーキックが蹴れる
んだと宣言しているような素晴らしいゴールだった。

追加点はすぐに。またも熊谷から。小笠原が芸術的なサイドチェンジのパス。熊谷がフリーで受け
たボール。充分に溜めを創って名良橋の上がりを誘発する。名良橋は大声を出しながら上がってい
ったのだろう。熊谷、名良橋の位置も確認せず、長いスルーパスを右サイドの花道へ。名良橋必死
に走る。走る。サイドラインギリギリでボールにおいつく。ピクン、と名良橋の首が動いて中を見
る。ピクンと柳沢の頭が動き、フォローする動きから点を取りに行く動きへ。

名良橋のセンタリングが伸びる。ニアの平瀬を超え中央へ。中央の柳沢相手DFを競り合いながらヘ
ディング。最高到達点でしっかりとした角度でヘディング。名良橋と柳沢の動きが完全にシンクロ
していた。ボールは柳沢により角度を変えられ、ファーサイドのサイドネットへ突き刺さる。
ゴーーーーーールルルル。2-0。柳沢ゴーーール。

完全にペースを掴んだ鹿島。対する市原はチキンなマインドが出てきたのか、鹿島が良すぎるのか
更にボールを持てなくなってしまう。小倉はやはり一瞬の動きで自分のスペースを作り出し、好き
勝手なプレーが出来てしまうモンスター。大柴も小柄ながらいい動きをして中盤のダイナモとして
目立つ。阿部、酒井のボランチコンビも才能は抜群。名前だけなら充分ゾクゾクするメンツ。しか
し支配するマインドには勝てないのか、コンビという動きもスピードもないまま自滅していく。

前半終了。そして後半開始。後半締りの悪かった中盤をトニーニョセレーゾは修正してきた。トレ
スボランチを止め、熊谷を攻撃的な前目の位置へ。スクエアタイプの中盤へ変化してきた。後半途
中まではこれがはまった。

平瀬と熊谷が大きく両翼に開いて小笠原のボールを待つ。小笠原が左ならば熊谷が。右ならば平瀬
がサイドライン際でボールを待つ。小笠原は自分がボールを受けた瞬間、すぐにプレッシャーを受
けようとも必ずファーサイドを見ている。そして一気に展開を変えるサイドチェンジのパス。受け
た平瀬や熊谷はフリーでかならず受けられる。鹿島の攻撃はこのスタイルから何度も創られた。

後半はまさに小笠原のチームだった。小笠原にボールが集まり拡散していく。熊谷は右サイドを自
由に走りまわり、平瀬は左の平瀬ゾーンから切れこんでいこうとする。小笠原がゲームを創り、チ
ームも小笠原に従う。

来年の鹿島がそこにあった。熊谷が走り、中田が中盤を占める、本田やビスマルクが位置するピー
スには誰が入るのかわからないが、確実に小笠原をゲームメーカーとしたチームになるに違いない。
そして、小笠原の前には強力なツースピアヘッド、柳沢と平瀬。そして、なんと形容していいのか
悩んでしまうドリームメーカー本山もいる。

来年の鹿島を、そして2002年の日本を想像してしまう今日の鹿島だった。

試合はこの後柳沢が足に違和感を覚えて交代。相手の林の投入から市原ペースとなり、小倉にコーナ
ーからのヘディングで今季二失点目を喫するが、2-1で逃げ切る。水曜日としてはまあしょうがない。
夏場の試合。無理をして次の試合に負けるよりも確実な一勝だ。

そうトニーニョセレーゾはまた内田を入れて名良橋を上げる戦術を取ってきた。トニーニョセレーゾ
の趣味だけかと思ったが、この試合では何度か内田のいい斬れ込みがあった。今までは緊張して無難
なプレーに終始していた内田だが、少しづつプロの試合に慣れてきている。もう少しでていれば、内
田の実績に見合ったプレーがトップの試合でも見れるかもしれない。

トニーニョセレーゾはそういう事も考えて指揮しているのだろうか。今日の熊谷の起用方法といい、
もしかして名将? と思わせてしまう雰囲気はある。ちなみに優勝したとはいえゼマリオにはまったく
そういう感じはなかった。まだまだ油断はできないが、鹿島新黄金時代のためにも期待したい。














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