ANTLERS Diary Ant-mark



2000.07.08  2nd.ステージ 第03節 


鹿島アントラーズ vs
         ジュビギャル磐田

        炸裂! 相馬ダンス!!
        






神様もこの試合だけはいい天気でみたいらしい。考えてみれば、前期、99年、98年、97年とこのクラシコ
"伝統の一戦"が雨にたたられたという記憶がない。この日も前日まではNHKのために早めたこの試合だけ
が台風の被害を受ける事になると思われた。しかし台風は大きく右へそれ、銚子沖を通過したにも関わら
ず、12時にはもう晴れてしまった。天気が悪いとこの試合のチケットを手放した人達は地団駄を踏んだに
違いない。

熊谷がスタメン。ここ数試合好調を保っているが、さすがにこの試合だけは、相手が磐田だけに、手堅く
本田がスタメンに復帰するに違いない、と思っていた。しかしトニーニョセレーゾは熊谷を選んだ。こう
して世代交代は進んでいくのだろうか。

対する磐田はジウコヴィッチとバンズワムとかいう外国人が加わっている。鹿島へのプレゼントは外国人
GKが来たばかりで連携が取れないこと、ジウコヴィッチが真ん中に位置することで藤田が右サイドハーフ
として登場したことだった。ジウコヴィッチは決して下手ではないが、藤田がサイドへ移動する事で、藤
田のボールタッチが極端に減っている。名波や奥や中山が活躍していても、磐田の中心は藤田。中心がズ
レていることは鹿島にとって大いにアドバンテージだ。

試合開始。テレビなどでは鹿島が引き気味と散々言われていたが、もともと鹿島は中盤が追いかけてプレ
ーエリアを限定し、ディフェンスラインで奪う守備。だから守備ラインはもともと深く取っているし、中
盤やFWは守備のために大いに走りまわる。

そして最近は"昔のように"速くダイレクトなパス交換から、10秒以内で終了するアタックが復活しつつあ
る。鹿島第一次絶頂期の97-98天皇杯決勝の3点はいずれも10秒程度でシュートまで行っていた。別に守備
的なサッカーではなく、相手がジュビロだからこそ余分な驕りのないいつもの鹿島らしいサッカーをして
いただけだ。

風の影響か、下が水を吸って少し柔らかくなっているのか、選手たちはボールコントロールでしばしばミ
スをおかし、転んでいた。お互いの美しいパスワークがなかなかでない。しかし、鹿島の中盤の方がビス
マルクというハンデを背負いつつも機動力が有るため、出足で一歩だけ勝ち、すぐに数的優位をつくりボ
ールを奪い、攻撃チャンスを創り出していた。引き気味と言われた鹿島の方がシュート数で上回っていた。

その守備の中心は両ボランチ。ダブルコウジだった。中田が代表ディフェンダーらしく後に下がってしつ
こいディレイをかけるディフェンスなら、熊谷は前へ前へ飛び出していき、細い足を素早く素早く相手に
絡ませてボールを奪っていく。二人のディフェンスはまさにバスケ。アグレッシブなフルコートプレス。

特に熊谷は素晴らしい。往年のサントスのようにきれいでフェアではないが、だんだんと美しい守備が
できるようになってきた。スタンディングのまま、相手の鼻先に回りこみボールを奪っていく。背筋は
スッキリ伸びたまま。

そして前半24分。ディフェンスラインでボールを奪った鹿島。ボールを持つ名良橋が前を見る。名良橋、
そのままロングボールを前線へ。平瀬このボールへ反応する。グングンと加速していき、相手DFをぶち
抜く。名良橋の蹴るボールは秋田とは違う。しっかりとバックスピンがかかり、ワンバウンド後。ボー
ルの勢いが止まる。平瀬が相手DFを完全に押さえきり、ボールをトラップ。そのままペナルティエリアへ。

相手GKは飛び出すタイミングを完全に失する。平瀬右足でボールを止め、シュート態勢へ。しかし走り
込んだままのため、思わず左足に当たってしまう。バンズワムびっくり。平瀬は水から角度を厳しくし
た上に、ええいままよとばかりにシュート。しかも厳しいニアへ。これが見事にゴールネットへ吸い込
まれていく。ゴーーーーーーーールルルルル。鹿島1-0。

平瀬は平瀬。厳しかろうがミスだろうが何だろうが、GKと一対一ならまさに無敵。

平瀬、名良橋の元へ走りこむ。名良橋も嬉しいそうにやってくる。二人向き合い。相馬ダンス開始。両
手ブラブラ足はヒンズスクワット?。相馬が鳥取地方に伝わるストレッチを伝授したものらしい。二人大
喜び。スタジアムはごく一部の青ギャルを除き大爆笑。相馬は苦笑い。

バンズワム。平瀬じゃしょうがない、たまたまだろうと思っていたが、次の失点で信頼感はいきなりゼ
ロへ。大神、尾崎といい、このチーム、自分達のキーパーを相手へのハンデと思っているのか。

次の失点はわずか数分後。またみディフェンスラインが奪ったボールを小笠原へ。小笠原、ほんの一瞬
だけ前を見る。その一瞬で全てを判断。小笠原の良さはアイディアの豊富さと、そしてほとんど振りを
必要としないキックだ。このときもほとんどスウェーバックがないまま前方へパスを繰り出す。

全員がその予測の出来ていないパスに一瞬動きが止まる。動けたのはその瞬間を待っていた柳沢だけ。

柳沢、走りながら足を完全に伸ばしきりつま先だけでトラップ。ボールは前へ転がっていくが柳沢のト
ラップですでに勢いは殺されている。柳沢が走りこみボールを再度トラップしつつ、中へ切れこむ。
バンズワムびっくりはしていない。しかし柳沢のシュートをよけるように動いてしまう。柳沢いつもの
ようにゴールキーパーの正面へのシュート。しかしゴールキーパーは既にいない。ボールはまっすぐ
ゴールへ突き刺さる。ゴォォォォォォーーーーーーール。2-0。

柳沢大喜びへ名良橋へ向かう。名良橋はいつもの水分吸収タイム。柳沢がくるのを見て急いでボトルを
投げ捨てる。平瀬もやってきた。三人揃って相馬ダンス。もう笑いは止まらない。次節はサポシー全体
でどうぞ。

試合は後半へ。磐田は藤田を中央へ。ジウゴヴィッチを左へ、右に川口を入れてきた。そして前回の対
戦でも見せたように川口の俊足を使った攻撃で攻勢に転じて来た。何度も何度も鹿島の左サイドに攻め
こむ川口。鹿島は一方的に押されている展開。

しかし鹿島は失点をしない。川口にボールがまわっている限りは。足が速いだけでは得点は奪えない。
いくらサイドを突破しても中央へ待つ人間へセンタリングを上げられなければ、ただの競争だ。鹿島の
左サイド、相馬と中田はここでもいい守備を見せた。川口をサイドの花道へ追いやり、ボールを持たせ
てドリブルさせる。

しかしペナルティエリアの脇まで侵入すると相馬が張付き、中田がセンタリングのコースを塞ぎにくる。
相馬が中に絞っていれば中田が腰を落として対応する。一年前あまりに淡白な守備に不安を覚えた中田
だが、代表としての自信が芽生えたのか堂々として逞しい守備をみせている。結局追いこまれた川口は
適当なセンタリングを上げてお終い。鹿島バスケ部のトラップディフェンス完了。

2得点をとれば、相手が磐田なれば、どこのチームでも守備的に戦う。そうしておいて効果的なカウンタ
ーで相手を破壊できればいいのだが、ここらへんが鹿島の攻撃陣に貪欲さが足りない。淡白なミスを繰
り返し攻撃のチャンスを減らしてしまう。ビスマルクからのサイドチェンジをダイレクトボレーで小笠原
が撃ったシュートくらいか。当然この日も銅像シュートを撃った小笠原だが、やはり精度を欠いている。
あれはもしやシュートと見せかけてドリブル開始の布石なのか。

平瀬、柳沢は疲れからかミスが多い。前半守備にも多いに貢献し、何度もDFの裏を取るためにムービン
グを繰り返したためだ。長谷川という選択もあっただろうが、やはり相手はジュビロ。安全策でトニー
ニョセレーゾは小笠原にかえて本田。トレスボランチに変更した。しかし本当はまったく動けなくなっ
たビスマルクにすべきだった。

ビスマルクといえばこの試合。遺恨試合であったのだが服部は、いや磐田は大きくそれを意識しすぎた。
いつもならマリーシアたっぷりのプレーで鹿島の選手を次々と引きずり倒していくのだが、この試合で
はビスマルクを意識しすぎた。そして自分のプレーが報復行為と取られることを警戒してあたりが弱い。
鹿島は前回のビスマルクの肘うちで思わぬ利益を受けていたのだった。

これで完全に前線と中盤が切れてしまう。柳沢にかえて本山が入っても変わらず。むしろ相手が勢いづ
きサイドに逃げた高原からのセンタリングを中山に決められてしまう。やはり中山は侮れない。

2-1。鹿島は守る。必死というよりは落ち着いてしっかりと。しかし攻め手がないために前方でキープ
できない。そのため連続攻撃を受けてしまう。今日の審判は足でのファールは殆ど流し、ゲームを切ら
ないいい審判だった。リーグもこの試合にはしっかりとした審判をつけてくれる。このクラシコが名ゲ
ームになる一因か。しかし後半38分。ここで演出が出過ぎてしまった。同じような形で柳沢が倒された
時は流されたが、秋田が高原へ当たり、その後高原が自分でバランスを崩し倒れただけでPK。ユーロ20
00で散々ゲームを壊しつづけた終盤でのPKプレゼントが出てしまった。

しかしキッカーは中山。ゴールキーパーは高桑。鹿島にはブラジル奥地に伝わる邪教の呪文に通じてい
るビスマルクもいる。彼はユニフォームの乱れにも煩い。中山もいい加減わかっているのか、自分でユ
ニを掴んで「出してねーよ、さわんじゃねえー」と言い返す。邪教の呪文よけには藤田と福西が立ちふ
さがる。もう何の競技だがわからなくなるが、これもクラシコの風物詩か。

以後は省略。前回のPKシーンの記述を参照されたい。

前回とまったく同じようにうなだれる中山。泣きそうに興奮する高桑。狂気乱舞の鹿島サポ。いやほん
と、神は偉大なり、とか無意味に叫びたくなる気持ちになってしまう。ありがとう中山、愛している。
いつまでもお元気で。

もうこうなっては負けられない試合。鹿島の魂はよりヒートアップ。ジュビロの猛攻はかわらないが
もう際どいシーンは創らせない。鹿島はペナルティエリアに何重にも壁をつくり弾き返す。そして、こ
ぼれ球に素早く反応して前線へ蹴り出していく。

長い長いロスタイム。平瀬に代えて金古まで投入するトニーニョセレーゾ。ベンチも必死だ。相手のロ
ングパスがサイドラインを割る。ピッピーーーピーーーーーーーー。試合終了。鹿島三連勝。いやそれ
よりも磐田にきっちりと勝てたことのほうが大きい。これで鹿島が勝ち負けを考えなくてはいけないチ
ームがひとつ減った。あとは清水と西京極の京都、セレッソくらいか。序盤にこの大きな勝利は嬉しい。
選手には自分達のプレーへの満足感と自信がつくだろう。そしてチームへの信頼感も。

大きな勝利。勝ち点は3だが、精神的な勝ち点は大きく上乗せされる。意外な形で二得点。そして1点は
失うものの途切れない精神力で守り通して勝つ。まるでチャンピオンシップのような展開。たった一点
差というのに、サポシーではオブラディオプラダ。スタジアムが紅く揺れる。

勢いから自信へ。そして断固たる意志へ。その先には・・・・。






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