ANTLERS Diary Ant-mark



2000.07.01  2nd.ステージ 第02節 


鹿島アントラーズ vs
         川崎フロンターレ

        カシマスタジアムには
        剛い鹿島がよく似合う






名良橋が右手に鋼鉄を仕込んでスタメン復帰。本田は「勝っているチームはいじるな」の鉄則のために
ベンチスタート。相手は二部直前のフロンターレ。何があってもまけるわけにはいかない。

試合は「地獄が見えている」フロンターレのしぶといプレッシャーから始まった。暑い、夜でさえ暑い
この日に、フロンターレは考え無しのプレスをかけてくる。まさに背水の陣。鹿島はこのプレッシャー
のためか、暑さのためか、はたまたスタミナ温存のためか、プレーが鈍くパスミスの連続で攻撃の形が
創れない。

平瀬にポストさせても駄目。熊谷やビス、ファビアーノはパスを相手に渡してしまう。しかも相手には
イジドーロというよく働くエジウソンみたいな選手が加わり、いやな感じで鹿島陣内をかきまわしてい
る。鹿島スタジアムで攻めても形が創れないでいるのを見ると、ベルディ川崎戦やガンバ大阪戦のいや
な感じがチリチリを後頭部を刺激する。

そんななか、中田と小笠原は素晴らしいパフォーマンスを維持している。相手のコーナーキックを守っ
てのカウンター、ビスマルクのパスをセンターサークル付近で受けた中田が走る走る。そして、冷静に
走る。走りながら自分で自分の選択肢を狭めてしまう中田が、このときはしっかりとファーサイドを見
ていた。左サイドから繰り出した中田のアーリークロスは見事逆サイドのゴール前の平瀬に到達する。
そこに西澤がいればフランス戦の素晴らしいボレーが再現しただろうが、届かずスッテンコロリン。

中田は守備でもきっちりと効いている。大きな体をしっかりと張って本田のいない中盤を支えている。
ナイジェリアの熱い夏を思い出しているのか。

そして、もう一人のナイジェリア組・小笠原。いきなり2分に銅像シュート。段々と精度が低下してい
るのは気のせいか。前線に上がってはゴール前で二人のDFの間を通すひさしぶりに痺れるようなスルー
パスをゴール前へ通す。そして味方がボールを持ち自分がゴール前でフリーになっていれば、突如そし
て静かにフリーランニングを開始して、ターゲットなるように動く。小笠原の輝きは無得点だった前半
にこそ、むしろ輝いていた。

この二人の動き、そして相手の消耗も加わり、前半40分すぎからは鹿島ペース。鹿島の連続攻撃が
続く。しかしゴール前の奥野らの固い壁は壊せない。ほとんどシュートを撃てないまま前半を終わる。

そして怒涛の45分。後半開始。いきなりゴール前で得たFK。ビスマルクのボールをファビアーノが擦
るように角度を変える。ボールはキーパーの手の先を通りサイドネットに突き刺さる。ゴーーール。
前半あれほど苦労した1点がいきなり入ってしまう。

こうなると鹿島のペース。相手の攻めてくるところを逆襲して・・・というより、1点を取ったことで
相手のプレーには焦りが、鹿島のプレーには冷静さが出てくる。焦りは体力の消耗を、冷静さは視野を
広げる。鹿島は人がどんどんと飛び出してきてパスをつなげ出す。動くことでフリーになり、フリーに
なることで正確なパス交換が可能となる。鹿島は完全にペースを握った。

相手にはイジドーロとガナハというけっこういいFWがいるが、いかんせん二人にボールが出ない。攻め
られ続けているとファールも多くなってくる。止まらない悪循環。

そして追加点。中盤でボールを奪った中田が、和製ファルカン、和製グラディオラ(と煽てておこう)ば
りの素晴らしいスルーパスを平瀬に通す。平瀬、減速して切り返してしまう。もうドリブルはできない。
相手が寄ってくる。しかし柳沢がファーでうろちょろと動いていたため、GKとDFの注意はボールに集中
しない。そんな折平瀬の撃ってしまうシュートは相手DFに当たり方向が変わりゴールへ突き刺さる。
ゴーーーーーール。2-0。

鹿島でもっともうまいFWは柳沢。しかしもっとも点を取っているのは、恐らく一番ボール扱いが雑な(下
手なのは長谷川だけど)平瀬。荒れ弾のピッチャーは撃ちづらいというが、平瀬の荒れたプレーは読みづ
らいのか、単なる強運なのか。理解できない。

まだ鹿島は手を抜かない。暑さにもバテていない。勝っているときはそんなものだろう。

相馬。この日の相馬も前節の出来がけっして年一じゃないことを証明した。左サイドの冷静な守備から
ここぞと見たときには既にオーバーラップを開始している。そして、味方もそんな相馬の前のスペース
へパスを出してくれる。1本、2本、3本4本と相馬のオーバーラップからの攻撃が続く。それもゴール裏
へのセンタリングもなし。

オーバーラップを見ていると、相馬の足が速くなったんじゃないかと思ってしまうほど素晴らしい。勢
いがある。

後半30分。右サイドで平瀬がボールをキープ。良く見ているし戦術として話しているのだろう。相馬が
フリーで走りこんでいるのをきちんと確認。逆サイドまでサイドチェンジを。相馬トラップ。「そばに
いろ」と注文を出されている中田はきちんとそばへ。相馬は預けてスペースへ走りこむ。

中田左足でトラップ。そして左足ならなんでも出来る王様プレー。左足アウトサイドでオープンスペー
スへスルーパス。相馬ダイレクトで左足でのセンタリング。相馬の左足が描いた軌跡を見ているだけで
嬉しくなってしまう。何度ビデオを見返したことか。素晴らしい円を描き、しっかりと固定された左足
から放たれたボールは、ドライブが見事にかかり、GKとDFの間を通る。その先は見るまでもない。強運
打魔王・平瀬はしっかりと走りこみ、しっかりと勝ってヘディングを叩きこむ。ゴーーーール。3-0。

相馬完全復活。相馬のセンタリングが次節磐田を粉砕する。・・・・と決め付けていい夢をみよう。

3-0。本田、本山、長谷川と次々と投入。今までの遅すぎる交代からは考えられない。セレーゾもわかっ
てきたのか。

そして締めはついに復活の長谷川。またもコーナーキックのクリアボールを戻ってきたモトヤマがヘデ
ィングで熊谷へパス。熊谷はドリブルで左サイドを駆け上がり、そして逆サイドの長谷川へ。長谷川は
ボレーで落として中央のピスマルクへ。ビスは相手を引きつけて右チョイ前へパス。そのフリースペー
スへ長谷川が走りこむ。ペナルティエリアへはいったばかりだが長谷川ダイレクトでシュート。ボール
は長谷川の勢いを持つ。相手GKの足に止められることなく、ゴールネットへ突き刺さる。ゴオオーーール。
4-0。長谷川がサポーターへ深々と礼をしている。しかし礼をしたいのはこちらだ。よく帰ってきてくれ
た。よくぞ長谷川が持つ鹿島の魂をみせてくれた。ありがとう長谷川。

ひさしぶりにみせてくれた鹿島らしい攻撃。全員が走りこみ、パスが流れように繋がり相手に触らせな
いままゴールネットへ突き刺さる。こういう鹿島が見たかった。カシマスタジアムでこういう鹿島が
見たかった。

試合終了。4-0。2試合続けての零封。そして大量得点。後一試合、磐田戦。今でももっとも強いと感じ
るのは磐田、そして清水。磐田を倒せればそれは自信となり、若い鹿島に成長を促すことになるだろう。
カシマスタジアムで磐田を迎えるのは、あのチャンピオンシップ以来。あの日の戦いを覚えているだろ
うか。あの紅い鹿島の戦いを。あの鹿島を超える鹿島をここカシマスタジアムで見てみたい。








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