ANTLERS Diary Ant-mark



2000.05.20  1st.ステージ 第14節 


サンフレッチェ広島 vs
         鹿島アントラーズ

        紅い炎は
           消えたのか






柏戦での臆病な大人過ぎるサッカーが、鹿島から覇気とチャレンジ精神を失わせた、そんな感じ
さえする大阪、広島での敗戦。しかも連続して無得点。1失点での敗北。それ以上にまったく鹿
島の鹿島たる所以、炎の出るような攻撃が見られない敗戦。今までは試合が終了するので鹿島の
敗戦を信じることができなかった。最後の最後で逆転するんじゃないのか、そんな気分で見てい
たのに、最近では負ける匂いまで嗅げるようになってしまった。

大阪戦での開始83秒での秒殺。広島戦でのPK。気を抜いていたり雑すぎた点はあったとはいえ、
守備としては1失点で押さえたとも言える。問題はやはり攻撃なのだ。攻撃性なのだ。

広島戦、輝きを見せていたのは、名良橋と本山だけ。特に本山は、柳沢が退場になり平瀬一人が
前の状態で、今までの左サイドではなくトップ下として縦横無尽に走りドリブルでゴールへの道
を切り開いていた。そして、そのドリブルで半身抜いた一瞬にしかこないチャンスに次々とスル
ーパスを繰り出していた。東福岡時代の本山が、アジアユース最終予選で得点王に輝いた本山が
そこにはいた。

しかし、本山のように動きながらパスを出し、自分一人でも局面を打開し攻めのパスを出せる選
手が他にはいなかった。いつもの輝きがないがそれでも動ける小笠原は既に本山と交代済み。中
田のここ2試合の存在感の無さはほとんど犯罪。

スピードが身上で、そのスピードにのった状態でのドリブル突破が武器だった平瀬は、なぜか前
線でターゲット役ばかり。そして当然のようにトラップミスで次々とチャンスを潰す。大きな武
田。武田と違ってスピードで勝てるのに、何を思っているのか常に最前線にいてオフサイドに。
平瀬ならばラインの後ろから、DFを見ながらパスに反応しても勝てるはずなのに。

その平瀬や柳沢に次々とロングパスを出す秋田ら。まったく中盤がサポートしにいっていない状
態で柳沢にポストをやらしても、勢いが死んでいくだけ。柳沢の良さは正確なトラップ、そして
目にもとまらないダイレクトパスでリターン、自身は反転してゴールへ、という流れで活きるの
に、中盤のサポートがないため、しっかりとキープして返しても次の攻撃の起点とはならない。
遅すぎるばかりで、リターンした先には既に相手のDFが食らいついている。

柳沢自身も味方がチャンスを創る回数が少ない事を考えてしまって慎重になりすぎる。ゴール前
で何度味方にパスを出したことか。トニーニョセレーゾが平瀬ではなく柳沢を代えるのは、むか
つくが当然のこと。勝負しないFWと下手でしょうがないが勝負する事しかしらないFWでは、代え
るのは当然だ。それが彼らが最前線に位置している理由と特権なのだから。

ビスマルク、中田、そして動きが著しく衰えたというのか、サポートが著しく衰えているためな
のか、攻撃を次々と潰す相馬(フリーでスペースでボールを貰えなければ、タイミングとクレバ
ーさでここまで来た相馬には遺憾ともしがたい)、彼らの動きのなさ、スピードのなさは確実に
チームを蝕んでいる。なぜ中田よりも本田の方がアグレッシブなのか、開幕戦にあれだけ脅威の
運動量を見せたビスマルクはどこにいるのか。

ビスマルクがこのままならば、伊達公子とは来年の名古屋で結婚してもらいたい。

スピードなのだ。

テクニックやアイデア、経験、そんなものならば鹿島は現在でもJリーグトップクラスだ。「有望
な選手は一杯いるのになぜ二部落ちに」と自分達で嘆いていた浦和レッズとは違う。鹿島ではサブ
だった阿部が主力になれるように、鹿島のレギュラーはフランス日本代表を支え、シドニーU23を
支えている本当のトップクラスの選手ばかりだ。

それなのに、何人もの相手に囲まれ打開できず、次々とパスを後ろに繋いでいく。DFラインから
の確実性の少ないロングパス、やっと攻撃の形が出来ても、フォローが少ないため、阻止される
とボールは拾われ単発で終わってしまう。

スピードがない。無さ過ぎる。次々とボールに反応してスペースへ飛び込み、パスを呼び込み、
相手の守備陣を拡散させ、フリーの選手を作り出す。一人でも相手を交わし、交わした先に出来
るスペースにパスを出していく。サイドが空けばシュートやセンタリングを流し込み、こぼれ珠
にも素早く反応して、攻めるリズムと怒涛の勢い失わない。それが鹿島にはない。

各個人が各エリアで孤立している。苦し紛れにあるいは後ろに余裕を持って、正確なパスは回せ
ても相手を崩すことは出来ない。トニーニョセレーゾはすぐに足元に正確なパスを、といってい
るが止まっている足に正確なパスを出してもリズムはうまれない。

動きながらパスを貰い、動きながらパスを出して守備陣を切り裂かなくてはならない。そういう
選手を起用しなくてはならないはずだ。本山にはそれが出来たし、小笠原もできるはずだ。熊谷
には攻めへの動きがあり、名良橋には常にスピードがある。一瞬とはいえ中村幸聖には恐ろしい
ばかり、クィックネスを感じた。

鹿島の原点は、ジーコが鹿島を育てる事で一人でJリーグのレベルを上げた、とセルジオ越後に言
わしめたように、スピードと全員一丸となった動き、なによりも鹿島魂があった。鹿島の試合に
勇気付けられたという人は多い。鹿島にはそういう魂があったのだ。ジョルジーニョが体現したの
はロングパスやセンタリングではなく、そういう攻撃的な紅い魂なのだ。

精神論ではなく、技術があるからこそ、その上のレベルを見たいのだ。チームとしての鹿島、そし
てジーコから受け継いだはずの鹿島、それが見たいから、みな鹿島スタジアムに集うのだ。

次節は1stステージ最終節。そして連敗中の鹿島の真のホーム。鹿島スタジアムでの試合。おそら
く去年と同じような順位で終わることだろう。それでも鹿島が原点に戻り再び成長しはじめてい
る事をこの目で確認したいのだ。

選手は私達以上に屈辱に感じているはずだ。その屈辱を晴らすのは単なる勝利ではない。恵まれた、
もしくは当然の勝利では勝ち点しか掴めない。相手を徹底的に破壊して、自分達のサッカーを取り
戻す、それが復活への道となるばすだ。鹿島のサッカーを思い出して欲しい。鹿島の昔の試合の
ビデオを見て欲しい。そこには画面中真っ赤な意志がほとばしりでているはずだから。






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