ANTLERS Diary Ant-mark



2000.04.15  1st.ステージ 第07節 


セレッソ大阪 vs
           鹿島アントラーズ

  暗雲の空
      前途は多難





わずか2分間の攻撃で鹿島は全てを失った。それまでに多くのチャンスを放棄してきた罰なの
かもしれない。しかし2点目が試合とサポーターに与えたインパクトは大きい。失点後わずか
数十秒での失点。まるで初年度天皇杯決勝の悪夢を見ているようだった。

アントラーズはトニーニョの不動のスタメン。対してセレッソは、西澤が怪我を押しての出場、
毎年この時期は絶好調の森島、ノジュンユン、イジョンファ、そして去年の鹿島を長居で静め
た西谷と、攻撃陣のタレントは十分揃っている。何よりもそのコンビネーションは充実を迎え
ていると言ってもいいだろう。

試合開始。前半10分程度まではセレッソのペースで攻めこまれていたが、サイドが上がりだす
と段々と鹿島のペースになってくる。柳沢、ベベットがポストプレーでボールを折り返し、そ
れを本田、小笠原、中田らが素早く繋いで行く、そしてビスマルクが逆サイドに大きく展開し
ていく。セレッソの右は不明だ。攻撃時にはノジュンユンが何度も右サイドから切り崩してい
たのだから、ノの担当なのかもしれないが、守備となるとみんなが中に集まって、サイドに大
きなスペースを空けている。

そこへ相馬が走りこむ。ここ数試合でもっとも多くのオーバーラップを見せていたのではない
か。但し、FW以外に高い位置でのサポートが無く、以前のようにゴールラインまで抉りこんで
センタリングというのは終ぞ見ることはできなかった。

今日の辺見審判様は鹿島ひいきなのか、あまりはっきりとしないファールにもバンバンイエロ
ーを出して鹿島を助けてくれる。鹿島は前半の多くをボールを支配して過ごしていく。

ビスが、中田がボールを出していく。本田がパスをビスマルクへ出した後、再びダッシュして
ビスマルクを追いぬき、次のターゲットなろうとしている。

前半28分、中田がドリブルで中盤を突き進む。田坂が絡むが中田はその雄大なフィジカルとス
ライドの大きいドリブルで寄せ付けない。そういうプレーが見たかったのだ。そのボールを相
馬へつなぐ。相馬はダレイクトで前線の柳沢へ。ポストの柳沢もダイレクトで相手DFの間を縫
って中央に折り返す。そこへ走りこんでいたのは本田!!。今年の本田のシュートは枠に飛ぶ。
キーパーがやっと弾いて危機を逃れる。

本田の充実振りは凄い。最初は守備でよりアグレッシブなところを。そしてトニーニョの元で
練習していくに従って、パスアンドゴー、常にゴールを狙う姿勢、数多いシュートシーン、正
確なシュート、パスセンス以外は中盤では当然のこと、それをベテランの、守備では依然第一
人者とされる本田が実践している。

去年までゴールを持つとターゲットになっていた本田やパスはビスに預けてお終い、という本
田ではなかった。トニーニョが求める中盤を守備をきちんとしながらこなしていく。本田に出
来てなぜ小笠原や中田に出来ないのだろう。

その昔木村カズシが言っていた。昔の日本のように成長する場が限られていると、選手のピー
クは遅い。特に肉体のピークと比べて。肉体が動きづらくなった頃、経験と頭を使ったサッカ
ーとかリンクして、もっとも充実したプレーが出来る、と。しかし若い頃から真剣勝負で若い
頃からトップでのプレー経験がある世界では、肉体のピークと精神のピークが一致して、素晴
らしいパフォーマンスを示すことが出来る。自分もそういう世界に生きていれば・・・という話だ。

まさに今の本田がその状態なのかもしれない。30歳を超え本田の肉体は衰えてきている。それ
なのに今は現役時代で一番いい攻撃と守備のパランスが取れたミットフィルダーとして充実し
たプレーを見せている。惜しいとも思う、そしてまただからこそ、がんばって欲しいとも思う。
しかし何よりもそこでそのプレーをするのは、本当はヘタな本田ではない、本田よりも若く
うまいはずの小笠原がやらなくてはならないはずなのだ。

前半鹿島は確実にペースを掴めていた。しかしそこらに小笠原の姿はなかった。本来ならば柳
沢とベベットの近くにいて、柳沢のフォローと、待ちのベベットにジャストポイントでのパス
を送っていなければならないはずなのに。

小笠原と中田、彼らはまだ21歳。ほかの選手の21歳を思い出せば求めつづけるのは酷なのかも
しれない(あのヒデと比べても)。しかし、その安定感の無さがチームの戦力を確実に削いでい
る。中田が駄目な東京戦で小笠原はベストなパフォーマンスを見せ、今日は中田ががんばって
いるのに小笠原は死んでいる。ふたり揃って1.5人前なのか。

後半になってもトニーニョは動かない。もしこれがトルシエならば前半20分から見せしめアッ
プを開始して、フィールドの中の選手にすぐ交代できるんだぞとプレッシャーをかけ、本当に
後半10分で交代させていただろう。

あのパフォーマンスを見て、増田は何を見ていただろう。監督の仕事はチーム戦術の構築とマイ
ンド・マネージメントだと思う。ベンゲルやネルシーニョ、ソラリはチームに自信を与え、マジ
ック、いやマジックだと錯覚させる指揮を見せていた。そしてベンチを含めて戦う集団を作りあ
げる事で勝利を掴んでいった。トニーニョはまだ監督としては若い。そしてエリートだった。
増田や熊谷、本山らのマインドをきちっと掴んでいるのだろうか、彼らに戦う場を与える努力を
しているのだろうか、優勝劣敗という正しい競争原理を生み出すことが出来るのだろうか。

鹿島は攻めつづける。西澤だよりのカウンターに終始するセレッソに対して、鹿島のパスワーク
と攻撃のパターンの豊富さは結果にも繋がらなくとも見ていて期待を抱かせるものだった。しか
し攻めに終始していた鹿島の一瞬の気の緩みがその失点を産んだ。

名良橋が駆け上がり前線へ鋭いパス。これは相手にカットされるが中田がそこへ突っかける。し
かしあまりにも軽くきれいだった。相手は難なく交わし前線へ。ボランチの位置を埋めていた相
馬はこのカウンターに反応できない。森島が切れこみ、高桑は飛び出すも交わされる。必死に防
ぐ鹿島はゴールに入って2度3度とシュートを防ぐが、全てこぼれ球が拾われる。ゴールの外から
のリプレイでは中田がちんたらと戻ってくるのが写されていた。最後は西谷のシュートで撃沈。
鹿島攻めていたにもかかわらず1失点。そして数十秒後森島にゴールを奪われ、トドメを刺され
る。0-2。

鹿島はこの後、小笠原に代えて平瀬を投入、擬似3トップとした。しかしここでやるつもりで
あれば、この危機にこそ危機感を持つ増田を投入すべきだった。増田がリンクマンとなって
ボールを動かしつづけ、ビスマルクがロングパス、守備は本田にまかせ、名良橋は狂ったよう
に上がるべきだった。初年度の鹿島にはそういう狂気が時々存在した。ジョアンカルロスの
時の途中交代ばかりの柳沢にもそういう狂気が感じられた。

この後、ゴール前でビスマルク、柳沢のポストプレーからのパスでベベットが抜け出す。ここ
で辺見審判様、倒されたベベットにPKを与える。ビスマルクが決めて1-2。

しかし今日の鹿島にはここで手一杯。鹿島は攻めつづけるがゴールは遠く、鹿島は三敗目を喫
する。

柳沢、世界を目指す選手が蔵田風情にポストプレーを邪魔されていていいたのだろうか?ゴール
前シュートを撃つシーンで何度も邪魔をされ、ロングポールは奪われて攻撃のスタートの起点
になれない。いい動きはしている。しかし勝利には繋がらない。比較優位でいいプレーをして
いるだけだ。どこを誰を目指しているのか。柳沢はもう何ヶ月もゴールの匂いを嗅いでいない。

鹿島には去年のようなどうしようもなさはない。前途は多難だが有望なのも確かだ。しかしト
ニーニョがこのままのスタメンだけを優遇するようであればわからない。厳しい切磋琢磨があ
ってチームは強くなっている。片方だけが磨かれてもいい珠は産まれない。






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